<南風>地域に開くリノベ

 今の日本は人口減少による縮退の流れにあり、増え続ける空き店舗や空き家、空きビルなどが社会問題化している。昨年から空き家に対しての課税も変わり、空き家を持っているだけで損をしかねない。その解決策として、2011年から北九州市で始まったリノベーションスクールでは、空き物件などの稼働していない不動産(遊休ストック)を空間資源と捉え、周辺エリアの課題を浮き彫りにし、それを手がかりに新たな仕事や事業を提案する手法を学ぶことができる。

 うえのいだの土地もさまざまな問題を抱えており、一筋縄でいかないところが多い。今までのやり方ではうまくいかないと考えていたため、新しい発想を求め、私も3年前にそのリノベーションスクールに参加した。参加してからは、いかにうえのいだの畑を地域に開いていけるか、事業が地域にとってどうか、と考え続けている。

 例えば、うえのいだの畑を地域の施設の畑として提案してみる。畑周辺には、保育園や老人ホームが多い。そこで、移動による負担が少ない距離で、野菜の世話ができ、他園との交流や世代を超えた関わりが自然と生まれ、今までにない交流の場としての役割を担えないかと思っている。加えて、首里近辺は緑が多く残っており、水が豊富な場所だ。先日放送された「ブラタモリ」でもそのことに触れられ大変興味深かった。

 石嶺町は、安謝川の上流で水源地でもある。季節になるとわが家にも蛍が飛んでくる。そういった歴史や土地に根付いたものを地域の小さな観光として捉え直したい。多世代が集う畑で、養蜂や自然観察も織り交ぜた暮らしを思い浮かべると楽しくなる。

 地域の声を聞いて地域のために役立てる場所、面白い場所になることが、うえのいだが生き残る道だと考えている。

(玉城真 うえのいだ主宰、珊瑚舎スコーレ美術講師)

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