9月に入り、日本の世界王者二人がタイトルを守り、ともに他団体との統一戦に意欲を見せた。
まず世界ボクシング機構(WBO)スーパーフライ級チャンピオン井岡一翔(志成)は1日、東京・大田区総合体育館で同級2位フランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)を判定で下し、3度目の防衛に成功した。
昨年大みそかに行った防衛戦のドーピング検査で禁止物質の陽性反応が出たが、その後日本ボクシングコミッション(JBC)が検査手続きの不備を認めていた。
精神的なダメージは大きかったが、その中で勝ったことで新たな舞台へ前向きな姿勢を示した。
ロドリゲスは元ミニマム級の世界王者。29歳の挑戦者は序盤から積極的な攻撃が目立ち、井岡は「リズムが取れなかった」という。
しかし、中盤以降、的確なボディーブローでポイントを奪い返した。楽な試合ではなかったが、タイトルを守ることが最大の良薬。面目を保ち、安堵の表情も浮かんだ。
現在、スーパーフライ級の世界戦線は充実している。
世界ボクシング協会(WBA)スーパー王者フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)は安定感があり、国際ボクシング連盟(IBF)王者のジェルウィン・アンカハス(フィリピン)は9度の防衛に成功。戦績も33勝(22KO)1敗2分けと高勝率だ。
井岡の標的はアンカハスだ。「大みそかに日本で闘うのが理想。でも実現するならどこでもいい。アンカハスは知名度も実力もある」と対戦を熱望する。
相手が強ければ強いほど存在感を見せるのが井岡の最大の特徴でもある。IBF王者に勝てばさらなるステージが待っているはずだ。
WBOフライ級王者の中谷潤人(M・T)は10日、米アリゾナ州トゥーソンで元世界王者のアンヘル・アコスタ(プエルトリコ)を4回TKOで破り、初防衛に成功した。初回から持ち前の左強打で圧倒。挑戦者の鼻からの出血もひどく、レフェリーがストップした。
「いい勝ち方ができた。統一戦をやりたい気持ちが強い」と明言した。
米興行大手トップランク社のボブ・アラム氏は「(中谷は)才能があり、とてもパワフル。また試合を組みたい」。世界的なプロモーターも将来性に太鼓判を押した。
戦績は22勝(17KO)無敗。魅力的なサウスポーである。(津江章二)