〈朝鮮経済復興の方法論 3〉“陳腐なすべてのものと決別” 幹部・官僚の思想改造とシステム再構築

「国家経済発展5カ年計画は、旧態依然で陳腐なすべてのものと決別し、新たに出発することを求めている」-朝鮮労働党中央委員会第8期第2回総会(2021.2.8~11)の報告で金正恩総書記はこのように強調した。

全面的な総括、弊害の根絶

新たな5カ年計画を示した党第8回大会(2021.1)は、36年ぶりに(1980年の党第6回大会以来)招集された第7回大会(2016.5)から5年ぶりに開かれた大会であった。報告と討論、部門別協議会では、党と国家、軍事関連から社会生活に至るすべての分野に内在する偏向と欠陥が具体的に厳しく批判、総括された。

これまでの事業を肯定的な側面ではなく、批判的な見地から全面的に総括した今大会で最も慎重に討議されたのが経済問題だ。

国家経済の成長目標が甚だしく未達成となり、人民生活の向上において顕著な進展を達成できなかった結果を直視し、各部門の不振状態とその原因が分析された。

党第7回大会で想定した国家経済発展5カ年戦略遂行の目標に達しなったことについても、「国家の経済司令部」とされる内閣の執行力、統制力が微弱な現実が指摘され、「これまで蔓延してきた誤った思想観点と無責任な事業態度、無能力を放置し、今のような旧態依然とした事業方式を続けるならば、いつまでたっても国家経済を立て直せない」(党大会報告)という教訓が導き出された。

「消極性と保身主義を燃やし尽くし5カ年計画遂行で一大革新を!」 経済事業における欠陥を是正するためには、まずは幹部、官僚たちの旧態依然とした働き方から変えていかなければならない。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

党大会で批判された欠陥と弊害は、いきなり生じたのではない。歳月の流れの中で反復、蓄積され、それが誤った方式として定着し、経済の各部門に不振状態をもたらした。

例えば、党大会が定期的に招集されなかった期間に「苦難の行軍」と呼ばれた試練の時期があった。

1990年代、社会主義市場の崩壊と敵対勢力の執拗な孤立圧殺策動、相次ぐ自然災害によって国家経済が打撃を受けた。多くの工場、企業が操業できず、人民の食糧難、生活苦が続いた。社会主義本来のシステムと秩序を維持することが困難な状況の中で、各部門、各単位がそれぞれ生き抜こうと孤軍奮闘した。「自力更生」、「自給自足」のスローガンを掲げることもあった。

しかし、国力が向上し、国家がすべての面で正常な発展を目指す今の視点から見ると、それはある時期に仕方なくとった過渡的、臨時的な方法だ。

各部門、各単位が独力で成し遂げることを肯定することで、国家的利益とは無関係に各自の当面利益のみを追求する過去の経営方式が存続すれば、無秩序と自己本位主義が助長され、国家の経済圏と統制力が失われていく。

一方で、内閣が本来の役割を果たさず、経済に対する統一的指導と管理を適切に行わなければ、国家の統制を受けることなく個別の利益を追求する利己的な経営活動はいつまでも根絶されない。

現在の経済革新は、これらの悪循環に終止符を打つためのものだ。党大会を分岐点にして、部分的な改良・改善ではない、国家経済全般に対する一大変革が断行されている。

人民大衆第一主義政治の実践

昨年8月に発表された党第8回大会招集に関する決定書には「計画された国家経済の成長目標が甚だしく未達成となり、人民生活が著しく向上しなかった」ことが明記された。

計画された経済の成長目標が甚だしく未達成であったと明記された党大会招集に関する決定書が労働新聞の1面に掲載された。

人民は、党中央機関紙の労働新聞1面に掲載された決定書を読んだ。労働党は、欠陥を大胆に認め、それを公表することで、党大会を機に断固とした対策をとることを人民に誓ったことになる。

労働党規約の序文にも明記された「人民大衆第一主義政治」は、経済革新のプロセスにおいても貫かれている。

金正恩総書記が先代領袖たちの思想について、その本質は人民大衆第一主義であり、人民を天のように仰ぎ、人民のために献身的に奉仕するものこそ本物の金日成-金正日主義者であると規定した時から、党と政府の活動家に対する要求は著しく高まった。

人民生活と関連した切実な問題の解決で実績を上げた活動家は評価され、そのような部門、単位では社会の雰囲気が明るくなり民心和合が進んだとされる。

労働新聞に掲載された党大会招集に関する決定書が社会的反響を巻き起こしたように、人民生活向上に直結する経済革新も、人民の関心と信頼の中で高い要求を掲げて推し進めるという手法がとられている。

党大会を機に、党と政府の幹部、官僚たちは人民の期待が込められた視線をより強く自覚し、経済革新の成否と自らの運命を結びつけながら業務に取り組んでいる。

「国家の経済司令部」を統括する内閣総理は、日本の国会にあたる最高人民会議の演壇で「内閣は5カ年計画の期間に人民が肌で感じることができる実際の変化と革新をもたす」と誓いを述べた。

一方、経済事業における慢性的な悪習、古い慣例をあぶり出し、適時是正するプロセスがメディアを通じて公開され、それによって革新の課題に人民の注目が集まるようになっている。

党大会の開催からわずか1ヶ月後に党中央委員会第8期第2回総会が招集され、5カ年計画の初年度目標を設定する過程で露呈した国家経済指導機関の「消極的で保身的な姿勢」が批判されたことが実例だ。これに関与した幹部の振る舞いは「絶対に容認できない総書記同志の思想と意図に反する反党・反人民的行為と見なさなければならない」(総会における討論)と厳しく追及された。

党中央委員会総会で討論した趙甬元書記は、5カ年計画の初年度目標を設定する過程で露呈した幹部の消極的で保身的な姿勢が批判された。(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

総会では「特殊」という名の垣根をつくり、法の統制を受けずに社会主義経済管理の秩序を乱している企業(単位)の行為を「革命の敵」、「国家の敵」と見なし、「党権、法権、軍権を発動して処断」することを決定した。

近年、このような「単位特殊化」と「自己本位主義」が、「人民大衆第一主義政治」の理念に反し、経済秩序の混乱を引き起こいているという認識が社会的に浸透していた。これは総会の決定を人民の支持世論を背景に徹底的に執行するための条件となる。

「国家的な自力更生」のための対策

現在、朝鮮の経済革新における主な障害は、幹部や官僚たちの「陳腐で無責任で旧態依然の仕事ぶり」だとされている。

これまでも「困難な経済問題を早急に解決すべき」との主張を繰り返し、「経済管理の方法を改善する」と決意を幾度も表明しながら、自分の地位に汲々とし、現状維持に甘んじて惰性から抜け出せなかった幹部、官僚たちの思想的病巣を見つけだし治癒するプロセスが先行している。それは、党中央委員会の総会などで集中的に行われる

これに経済のシステムと秩序を合理的に整理整頓するプロセスが並行して進んでいる。非正常な時期に始まった過渡的、臨時的な方式を踏襲することなく、根絶するために思い切った措置が講じられている。

社会主義朝鮮の発展動力である自力更生も「苦難の行軍」時代のような各部門、各単位が独自に成し遂げる自力更生ではなく、「国家的な自力更生、計画的な自力更生、科学的な自力更生に発展させる」という方針が党大会で明確に示された。

今、朝鮮では国家経済を再整備するための革新的対策が講じられ、あらゆる旧態、陳腐なものとの闘いが続いている。

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