【新型コロナ】政府、「宣言」「重点措置」すべて解除の方針固める 一部自治体は慎重姿勢

 政府は、現在27都道府県に出している緊急事態宣言、まん延防止等重点措置について30日で解除する方針を固め、28日に開催される対策本部の分科会に諮問することを決めた。ただ一部の自治体は一気に解除することによるリバウンドを危惧しており、政府に対し自治体が段階的な制限解除を行えるよう配慮することを求めている。

ほとんどの自治体で新規感染者が前週の半分程度に

 27日午後に開催された専門家会合では、直近1週間の新規感染者数の推移が報告された。それによると27都道府県のほとんどの地域で、前週から比較した新規感染者数の割合は50%前後となっており、宣言の基準となっているいわゆる「ステージ4」を脱している。また重症者数、療養者数に関してもすべての地域で大きく減少している。

 ただ専門家会合では、感染状況の改善は認めつつも、解除した場合のリバウンドを防ぐため、マスクの着用など基本的な感染対策の徹底や飲食店、商業施設、集客施設に対する制限の段階的解除を求めた。政府は会合で出た意見を受け止めつつ、28日の基本的対処方針分科会に解除の方針を諮問する方針だ。

まだ一部指標が「ステージ4」の自治体、対策を模索

 専門家会合で示されたデータでは、人口10万人あたりの直近1週間の感染者数で「ステージ4(25人以上)」のままとなっているのは沖縄県(47.14人)と大阪府(30.59人)のみとなっている。他の自治体は宣言等の解除後、休業要請などの措置も解除する方針だが、沖縄県と大阪府は段階的な解除が必要だとして、宣言が解除された後も独自に各施設への営業時間短縮要請ができるよう、政府に対し「基本的対処方針」に段階的な制限解除の必要性を書き込むよう求めている。大阪府の吉村洋文知事は27日、記者団に対し「書き込んでもらうよう要請している」と述べた。

 自治体がこうした要請を行うのは、財源の問題があるからだ。各自治体は基本的に感染状況に応じて実際の対策を立案、実施できるものの、その範囲は政府が定める「基本的対処方針」の範囲内とされており、ここに書かれてない対策は国からの財政支援が見込めない。国の方針で認められないと、時短要請の補償金の財源が確保できず、対策が不十分になる可能性があるのだ。吉村知事はこの点を聞かれて「(要請するのは)そういう意味も入っている」と認めた。

 イギリスやシンガポールではここ数ヵ月、感染状況が収まったとみてロックダウンを解除し、全ての行動制限を解除した途端リバウンドが起きた。ちょうどデルタ株の世界的なまん延と重なってしまった事情もあるが、人流が「コロナ前」に戻ればリバウンドが起きることはすでに他国で証明されているだけに、いかにソフトランディングさせるかが鍵となる。

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