NASAのアルテミス計画における「月面探査車」の着陸ポイントが決定

【▲ NASAの月面探査車「バイパー」のイラスト。アルテミス計画の一環として月の南極にあるノビレ・クレーターの西の端の近辺において、水の氷やその他の資源を探します(Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter)】

NASAは9月21日、NASAの月面探査車「バイパー(Volatiles Investigating Polar Exploration Rover=VIPER)」の着陸ポイントを月の南極にあるノビレ・クレーター(Nobile Crater)の西の端の近辺に決定したと発表しました。バイパーは、2024年をめどに有人月面探査を目指すアルテミス計画の一環として、2023年中に、スペースX社のファルコンヘビーロケットを使って打ち上げられ、アストロボティック社のグリフィン月着陸船によって月面まで運ばれます。

これまで月の南極の探査は月から離れたところからリモートセンシング(remote sensing)によっておこなわれてきました。例えば、NASAのルナー・リコネサンス・オービター(Lunar Reconnaissance Orbiter)やエルクロス(he Lunar Crater Observation and Sensing Satellite)などによる探査です。

月の南極に直接着陸しての探査は今回のバイパーによる探査が初めてとなります。

月の南極にあるクレーターの中には永久影と呼ばれる1年を通して日の当たらない場所が存在します。この永久影の部分の温度は高くても-160℃ほどにしかなりません。そのためこの永久影の部分には水の氷が存在するのではないかと考えられています。

ノビレ・クレーターの西の端の近辺は、探査車で探査しやすい地形であるだけではなく、このような永久影の部分を含む科学的に興味深い場所が集っています。

バイパーは、このノビレ・クレーターの西の端の近辺を、水の氷や他の資源を探して、100日ほどかけ93km四方に渡って探査します。その延べ走行距離は16km~24kmほどにもなるといいます。また、少なくても6か所の科学的に興味深い場所を訪れ、少なくても3か所でドリルを使って掘削し、サンプルを採集して分析します。

こうして、バイパーはこの地域の地表と地表近くの地下について水の氷やその他の資源の分布のマッピングに挑みます。

NASAによれば、このような探査で得られた知見によって、月全体における水の氷やその他の資源の分布を明らかにしていくことは、将来における長期間に及ぶ有人月面探査において、非常に有用だといいます。

関連:人類が再び月を目指す「アルテミス計画」を分かりやすく解説

Image Credit: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter
Source: NASA
文/飯銅重幸

© 株式会社sorae