朝鮮のSDGsを解説 「季刊 朝鮮経済資料」2021年第3号

「季刊 朝鮮経済資料」(発行=KAN経済研究所)2021年第3号が発行された。

今号は①企業における品質管理のツール(解説・訳:廉貴成)②5カ年計画初年度の「初動対応」が示唆するもの(姜日天)③SDGsの進捗状況に関する自発的国家レビュー(VNR)について(文浩一)―の三つのコンテンツを扱っている。

①は、品質管理に関する三つの小論文(「工業企業所での品質とコストのバランス実現方法」「商業サービス事業所での品質保証および保存事業改善方法」「総合的品質経営のための新QC7つの道具」)の全訳。近年朝鮮では、需要充足のための従来の増産運動と一線を画す、品質優先の生産活動が活発だ。小論文について解説者は、「いずれも、海外における研究成果を紹介しながら解説する形をとっており、品質管理のための科学的ツールの導入に積極的な意義を付与している一端をうかがえる」と紹介している。

②は、朝鮮労働党第8回大会(1月)が示した新たな国家経済発展5カ年計画初年度の上半期における取り組みから、計画を遂行する体制のこれまでとの違いについて筆者の見解を述べている。党大会後、朝鮮では党中央委総会をはじめ会議や講習会などの重要な政治日程がかつてない頻度で相次いだほか、計画遂行を後押しする法規も矢継ぎ早に整備された。筆者は、「ここから見て取れることは、かつて類を見ない頻度と熱量、緻密さと厳格さで新5カ年計画をはじめとする第8回党大会の決定事項の進捗をプロモートしている姿である」とし、ここから「今般の諸条件が整備・補強戦略の遂行すらも容易ならざるものにしている実情と同時に、5カ年戦略(※)の二の舞は決して踏まないという意気込みが感じられる」と指摘している。(※党第7回大会が示した国家経済発展5カ年戦略。第8回大会で「ほぼすべての部門で未達」と報告された)

③は、朝鮮が今年7月に初めて国連に提出した持続可能な開発目標(SDGs)の進捗状況に関するVNRについて、その作成経緯と関連資料のレファレンスに重点をおいて解説。朝鮮経済の現状を踏まえてVNR公表に至った背景についても独自の見解を示した。VNRはSDGs 履行のための17の目標と95の細部目標、132の指標を示したが、本稿ではSDGsの進捗状況のうちGDPと農業に絞って言及。VNRに示された農業生産高に基づいて需給バランスを考察し、「昨今の食糧供給量は多少は改善しており、少なくとも過去の『苦難の行軍』を想起させるような事態には陥っていない」と分析した。

「季刊 朝鮮経済資料」は、朝鮮の学術誌に掲載された論文の翻訳および解説を主なコンテンツとする朝鮮経済の専門誌。在日朝鮮人の朝鮮経済専門家から成る朝鮮経済研究会が編集する。

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