大学後期開始 対面授業か、オンラインか 判断割れる

マスクを着用し、対面授業を受ける学生たち=佐世保市、長崎国際大

 長崎県内の多くの大学は夏休み期間中に新型コロナウイルスワクチンの職場接種を実施し、学生の接種率が8割を超える大学もある。地域の感染状況は随分落ち着いたが、9月中旬から10月上旬にかけて順次始まっている後期を対面授業に切り替えるか、しばらくオンライン形式で様子を見るかの判断は割れている。
 長崎国際大(佐世保市)は9月24日に始まった後期から、8割以上の授業を対面形式にした。オンライン授業は、受講生が150人を超える科目と、発声が頻繁にある語学に限っている。前期は約4割がオンラインで、感染状況によっては7~8割を占めた時期もあった。
 同大が対面主体に切り替えた背景には、学生や教職員のワクチン接種率の高さがある。九州の大学で最も早く職場接種に取り掛かり、学生の82%、教職員の95%が2回済ませた。学生は別の接種手段も含めると85%に上る。
 授業では全員がマスクを着用し、換気や消毒を徹底。教室の人数は収容定員の7割以下に抑えている。
 安東由喜雄学長は「学生の8割以上が接種に協力してくれた。感染対策をすれば対面でも問題ないと考えた」と説明。昨春から通常の大学生活を送れていない学生を思い「できることはやりたい」と言葉に力を込める。国際観光学科3年の原口瑞希さん(21)は「オンラインだと、授業とプライベートの切り替えが難しかった。対面は質問がしやすいし、友達にも会えてうれしい」と笑顔を見せた。
 長崎大(長崎市)は職場接種と医療従事者への優先接種で、学生の7割超、教職員の約8割が2回接種を完了した。9月28日からの後期は前期と同様、対面とオンラインを併用する。
 学生の発言機会が多い演習やグループワークは教室定員の5割以下に、講義形式は3分の2以下に規制。こうした方針は、同大に在籍する感染症研究者らでつくる「コアミーティング」で決定。感染の広がり方やワクチン接種の進捗(しんちょく)に合わせ、規制を厳しくしたり、緩めたりしている。教育支援課の担当者は「専門家がいる強みを生かし、今後も感染対策に取り組む」と話す。
 海外留学事情はワクチン接種で変化があった。2019年度、同大から留学した学生は約700人に上ったが、20年度は一斉に中止。海外での学びの機会が失われた。だがその後、国内はもちろん、受け入れ先でも接種が進み、一部の留学が8月から再開できたという。
 県立大(佐世保市、西彼長与町)は接種について学生に意向調査。約7割が受けると回答し、その多くが職場接種を活用した。ただ、10月1日からの後期は最初の10日間を完全オンラインでスタート。県外に帰省した学生には接種の有無に関係なく、9月26日までに県内に戻るよう要請した。担当者は感染力が強いデルタ株を警戒。「とにかくクラスター(感染者集団)を出さないように」と慎重姿勢だ。
 学生が県内に戻って2週間以上となる10月11日からは少人数の科目を中心に対面授業も再開する。担当者は「地域の感染状況とワクチンの効果も検証しながら対面をさらに増やせないか模索したい」と話す。

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