朝鮮にいる被爆者の現況と課題 朝鮮原爆被害者協会 書記長インタビュー

“被害者の怒り増幅させる”“非人間的な対応”

本紙平壌支局は在朝被爆者問題と関連して9月某日、朝鮮原爆被害者協会の桂成訓書記長(52)にインタビューを行った。全文は次の通り。

 -朝鮮原爆被害者協会の活動について

当協会は日本で原爆による被害を受けた朝鮮公民のための組織として、1995年2月2日に設立された。日本政府に対し原爆被害の責任を追及し、被害者に対する謝罪と賠償を実現することを活動の目的としている。

当協会では各級の人民委員会をはじめとする関係機関との連携の下、在朝被爆者に対する実態調査を通じて被害者を探し出し、被害実態と健康状態などを調べたうえで原爆被害者証明書を発給し、証明書所有者への治療およびリハビリテーションの優先的な実施などに努めてきた。

また、日本の過去清算を求める国際連帯協会の加盟団体として、在朝被爆者の実態と声を国際社会に広く知らせると同時に、日本政府の不当な対応を暴露し、問題の早期解決を求めるため日本をはじめ戦後補償を求める各国の団体と活動家、原爆被害に対する補償を求める団体との国際的な連帯行動を行ってきた。

桂成訓書記長

 -在朝被爆者たちの現況は

当協会では2006年12月から07年12月までを在朝被爆者に対する調査期間に定めて、各級の人民委員会、医学研究院の放射線医学研究所などの関係機関との連携の下、集中的な調査事業を行った。

調査の結果、広島で被害を受けた人が837人、長崎で被害を受けた人が1074人、計1911人を原爆被害者として登録した。そのうち男性が1635人で、女性が276人だ。

1911人中、生存者は382人で、死亡者は1529人だった。生存者のうち男性は228人、女性は154人だ。

調査期間に新たに探し出して登録した被爆者は4人で、平安南道で3人、咸鏡南道で1人見つかった。

生存者を年齢別に見ると2007年時点で、62~65歳が93人、66~70歳が91人、71~75歳が55人、76~80歳が57人、81歳以上が86人だった。

在朝被爆者たちの病状は、循環器系疾患、脳神経障害、消化器障害、感覚器障害、末梢神経障害、皮膚疾患、泌尿生殖器障害、がん、打撲、やけど、造血器疾患、呼吸器疾患、内分泌系疾患などだ。

実態調査を通じてわかったことは、被爆者に対する各種疾患治療のための特別な対策が求められるということ。また遺伝的影響で苦しむ被爆2世の病状も深刻で、彼・彼女らにも被爆1世と同等の治療が必要だということだ。被爆2世の間で生じている後遺症や社会活動への影響を把握し、相応の医療を施す必要がある。

直近では2018年7月に再調査を行った。前回の調査で明らかになった生存者382人中、111人に対する調査を行った結果、生存者は60人、死亡者は51人だった。

生存率は地方ごとにある程度の開きがあるが、平均すると調査対象全体の54・05%が生存し、45・95%が死亡したことになる。

今後、残りの271人に対する調査を行い、総合調査結果を出す予定だ。だが生存率は下がる一方で、高まることはないだろう。

-協会ではどのような援護策を講じているのか

先ほども申し上げたとおり、被害者に原爆被害者証明書を発給し、証明書を持つ被害者に対しては朝鮮国内のすべての保健部門において優先的に検診、治療を受けられるよう措置が講じられている。各地の療養施設を優先的に利用することもできる。

被害者の高齢化が進んでおり、体を動かすことが難しい被害者に対しては、居住地の担当医師らが毎日往診し、治療を施している。

また当協会ではQOL の観点から朝鮮各地の名勝地への参観事業なども行っている。

 -在朝被爆者問題に対する日本政府の対応をどう思うか

在朝被爆者に対する日本政府の対応は旧態依然としている。のみならず近年は在朝被害者の存在を度外視する政策がいっそう狡猾になっている。

厚生労働省と広島県は、被爆者である当協会の朴文淑副会長(78)に対し、2016年6月から18年1月まで3回にわたって「より簡潔で易しい」方法で医療費を支給するという通知と共にその申請書類を送ってきた(※)。

在朝被爆者に対してこれまで何一つ救済措置を講じてこなかった日本政府が、遅きに失したとはいえ医療費支給措置に関する通知を送ってきたことは、日本の良心的な市民、団体の粘り強い努力の結果だと受け止めている。謝意を表したい。

しかし医療費の支給措置に関する通知は、在朝被爆者が置かれた処遇や要求を完全に無視しているだけでなく、むしろ被害者たちの怒りを増幅する差別的かつ不公平なものだと言わざるを得ない。

日本政府はかねてより口では「在朝被爆者から被爆者健康手帳の交付申請があれば受理し、審査で不備がない限り被爆者として認定し、被爆者健康手帳を交付することができる」(広島市役所)と主張してきた。しかし「郵便による申請は受け付けない」とし、事実上、在朝被爆者たちが被爆者健康手帳の交付申請をできないようにしている。

また厚労省は日本の独自制裁の制約により医療支援はできないと繰り返している。朝鮮籍者の入国を禁止する独自制裁により、在朝被爆者が被爆者健康手帳交付のため日本を訪問したくてもできず、仮に渡航が許されても大部分の被害者は高齢で病弱なため長距離の移動は難しい。

日本政府は、在朝被爆者調査代表団や広島県医師会代表団をはじめとする日本政府関係者や医療関係者たち、民間の調査団がわが国を訪問して作成した報告書、当協会が発表した朝鮮人原爆被害に関する総合的な実態調査報告書、朴副会長の再三にわたる手紙などを通じて、在朝被爆者の実態について一定程度把握している。にもかかわらず日本政府は自らは何もせずに、「被爆者健康手帳の交付申請を受けたことはない」「個別申請による医療費支援以外の人道的医療支援はできない」と主張している。耳を掩いて鐘を盗むというものだ。

このような日本政府の対応は、在朝被爆者に対する明白な非人間的差別行為だ。

つまり「より簡潔で易しい」という医療費支給措置は、現在わが国において朴副会長だけが該当し、被爆者健康手帳がない他の被害者には適用されないものであり、むしろ被害者の強い怒りを呼び起こしている。

在朝被爆者問題は、日本政府が全的に責任を持って自ら解決しなければならない問題だ。日本政府は在朝被爆者問題を放置してきた責任も含めて、被害者たちに賠償し、すでに他界した被害者に関しては遺族に賠償しなければならない。

 (※)朴副会長は2歳の時に長崎県で被爆した。1992年、京都で開催された原水爆禁止世界大会出席時に被爆者健康手帳を取得している

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