朝鮮の新婚カップル、実態と本音は? 訪問取材・夫は大学生で妻は有望な研究者

日本と同じように朝鮮でも少なからず晩婚化の傾向はある。しかし「非婚」という観念はほとんど見受けられない。

朝鮮の若者たちはどのように出会って家庭を築き、どんな家庭生活を送っているのか。「夫は料理上手の愛妻家で妻は将来有望な研究者」という新婚カップルを訪ねた。

トントントン…東の空が白み始める頃、台所に規則的に響くまな板の音の主は妻ではなく夫だ。

平壌市大同江区域紋水洞に住むチョン・ハクミョンさん(31)、ユン・ウナさん(29)夫妻。1歳になったばかりの愛娘ヨソンさんを含め3人家族の食事の支度は、もっぱら夫の担当だ。

台所に立つ夫のチョン・ハクミョンさん(C)朝鮮新報

教育研究院高等教育研究所に勤めるウナさん。朝鮮の教育改革で重要な役割を担う。一方、ハクミョンさんは現役の大学生だ。朝鮮では大学就学前に兵役に就くことが多く、30代の現役大学生は珍しくない。在学中に結婚する人もまたしかりだ。

昼夜を分かたず研究に勤しむウナさんと、比較的に時間のゆとりがあるハクミョンさん。加えてハクミョンさんは平壌料理技術大学で腕を磨くコックの卵だ。台所仕事を夫が担うという役割分担は、夫婦にとってごく自然で合理的な選択だった。

そんな2人の出会いは? 朝鮮ではお見合いもごく一般的だが、ハクミョン、ウナさん夫婦の場合は恋愛結婚だ。2人が初めて出会ったのは平壌中心部にある大型図書館である人民大学習堂だった。

知的な女性が好みだというハクミョンさんは、人民大学習堂に行くたび、同じ時間、同じ場所で資料の読み込みに没頭するウナさんのことが気になったという。ウナさんもいつしかハクミョンさんを意識するようになり、次第に言葉を交わすように。互いを知る中で交際に発展し、2019年3月、2人は晴れて夫婦となった。

娘のヨソンさんが生まれてからは、ウナさんは以前にも増して多忙を極める。少しでも長く研究の時間を確保できるよう献身的サポートでウナさんを支えるハクミョンさん。朝食の準備はもちろん、大学の講義が終わればすぐに帰宅して夕飯の準備に取り掛かり、娘に離乳食を食べさせて寝かしつけ、時間があればウナさんを迎えに行く。

「研究者の妻を持つ夫の鏡」―ウナさんの職場ではハクミョンさんへ賛辞が尽きないという。

一方、料理の腕を磨くハクミョンさんにとって、ウナさんは試食担当でもあり貴重な助言者でもある。

チョン・ハクミョン、ユン・ウナさん夫妻と娘のヨソンさん(C)朝鮮新報

新婚夫婦は口を揃える。

「どちらか一方でなく夫婦が共に社会に必要な人材、なくてはならない存在になること。国の発展に少しでも力添えできる家庭を築くこと、それが理想です」

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