〈コリア・ニュース・コラム〉発展を促す労働党の手法 不利な場所を「モデルケース」に

朝鮮の軍事境界線付近に位置する五聖山は、1990年代後半、金正日総書記が国防関連の視察で幾度も訪れた場所だ。危険が伴う険しい山は「先軍政治」の象徴とされている。

五聖山は江原道金化郡にある。この金化郡が最近、朝鮮メディアに頻繁に登場するようになったのは、昨年の台風被害を受けてからだ。

 最も被害が大きかった地域の一つで、国家的な復旧作業が昨年末に完了した。

台風被害の後にに建てられた江原道金化郡の住宅(C)朝鮮新報

 今年2月の党中央委総会では同郡を「地方産業工場の新たな基準」とすることが決まった。国内メディアは工場の建設と運営準備などの動向を報じている。

 江原道は他の地域に比べ工業の土台がぜい弱で自然地理的条件も不利な土地柄だった。しかし江原道の人々は、自力更生で発電所を建設し、工場の生産を正常化させるなど独自の発展を遂げてきた。

 その不屈の精神は「江原道精神」と呼ばれ、他の地方の人々から称えられている。

 金化郡は内陸の山地に位置するとあって経済の土台は江原道の中でもとくにぜい弱とされる。実際にこれまで金化郡での経済活動はあまり報じられない。

 朝鮮労働党は、モデルケースの成果を他の地方・部門に一般化することで全体の発展を促す手法ととってきた。

 そのモデルは不利な場所を選ぶことが多く、金化郡もこれにあてはまる。

 「江原道精神」を生み出した人々への期待であろう。

 いま朝鮮では、「全国の均衡的な同時発展」(金正恩総書記)が求められている。「新たな基準」に指名された金化郡の人々は重責を担い、モデルとなる工場の建設を急いでいる。

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