打ち上げ2か月前の宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」仏領ギアナに到着

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡を載せてクールーに到着した貨物船MN Colibri(Credit: ESA/CNES/Arianespace)】

待ちに待った打ち上げの日が近づいてきたことを実感します。アメリカ航空宇宙局(NASA)と欧州宇宙機関(ESA)は、今年12月に打ち上げが予定されているNASA・ESA・カナダ宇宙庁(CSA)の新型宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」が、現地時間10月12日にギアナ宇宙センターがあるフランス領ギアナのクールーに到着したことを発表しました。

■16日間の船旅を終えてクールーに到着。打ち上げ予定日は12月18日

【▲ 宇宙望遠鏡「ジェイムズ・ウェッブ」を描いた想像図(Credit: Adriana Manrique Gutierrez, NASA Animator)】

ジェイムズ・ウェッブは六角形の鏡を18枚組み合わせた直径6.5mの主鏡を持ち、赤外線の波長で天体を観測する宇宙望遠鏡です。今年で打ち上げから31周年を迎えた「ハッブル」宇宙望遠鏡(主鏡の直径2.4m)は地球を周回していますが、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は地球と太陽のラグランジュ点のひとつ「L2」(地球からの距離は約150万km)まで移動して観測を行います。

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ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はノースロップ・グラマンが米国内で製造しましたが、打ち上げには欧州の「アリアン5」ロケットが使われるため、アリアン5の射場があるギアナ宇宙センターまで運ばなければなりません。

【▲ ノースロップ・グラマンのクリーンルームでコンテナに搭載されるジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(Credit: NASA/Northrop Grumman)】

打ち上げに備えて折り畳まれた状態(高さ約10.5m、幅約4.5m)で輸送を待っていたジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、全長30m・重量70トン以上(補助装置を含む)の特注輸送コンテナに収められた上で、貨物船「MN Colibri」に積み込まれてカリフォルニアを出港。途中でパナマ運河を経由しつつ、出発から16日後に約9300kmの航海を終えてクールーのパリアカボ港に無事到着しました。

海上輸送に使われたMN Colibriは、アリアン5ロケットの部品を欧州からクールーへ運ぶために建造されたRORO船の1隻です。ESAによると、同船はクールー川の河口近くに設けられたパリアカボ港へ入港するために喫水が浅く作られていますが、今回は安全を期するために川底を特別に浚渫した上で満潮時にあわせて入港したといいます。

【▲ クールーのパリアカボ港に入港する貨物船MN Colibri(Credit: ESA/CNES/Arianespace)】

ESAが「これほど待ち望まれている宇宙科学ミッションはそうありません」と表現するジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は、2021年12月18日の打ち上げが予定されています。当初は2007年に計画されていたものの、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の打ち上げはさまざまな理由から延期が繰り返されており、14年遅れで宇宙へ飛び立つことになります。

なお、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡は打ち上げから1か月ほどかけてラグランジュ点へ移動しつつ主鏡やサンシールドなどを順次展開していきます。機器の冷却や較正などを終えて観測が始まるのは打ち上げの6か月後になる見込みです。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡による宇宙最初の世代の星(初期星、ファーストスター)や最初の世代の銀河太陽系内の惑星・衛星太陽系外惑星などの観測を通して、宇宙の未解決の謎を解く鍵が得られることが期待されています。

【▲ ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡打ち上げの様子を描いた想像図(Credit: ESA – D. Ducros)】

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Image Credit: NASA
Source: NASA / ESA
文/松村武宏

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