時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果<令和2年度版>を公表

令和3年8月20日、厚生労働省は、「長時間労働が疑われる事業場に対して労働基準監督署が実施した、令和2年度の監督指導の結果」をとりまとめて公表しました。
令和元年度の同データに関する記事はこちらをご参照ください。

2020.10.06「長時間労働が疑われる事業場に対する令和元年度の監督指導結果」が公表されました 2020年9月8日、厚生労働省は「長時間労働が疑われる事業場に対する令和元年度の監督指導結果」を公表しました。 対象となった事業場は、以下の通りです。 ①各種情報から時間外・休日労働数が1か月あたり80時間を超えてい...

対象としている事業場は、「各種情報から時間外・休日労働時間数が1ヶ月あたり80時間を超えていると考えられる事業場」や、「長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場」です。
今回は、前年度と比べてどのように変化があったか、こちらの令和2年4月~令和3年3月までの監督指導結果のポイントについて簡単に解説いたします。

対象企業は減少傾向

今回調査の対象となった24,042事業場のうち、違法な時間外労働を確認されたのは4割近い8,904事業場(37.0%)でした。
そのほか、主な違反内容として、賃金不払残業があったものが1,551事業場(6.5%)、過重労働による健康障害防止措置が未実施のものが4,628事業場(19.2%)です。

業種別で見てみた場合、監督指導を実施した企業のうち法令違反があった企業については、下記の通り昨年同様「商業」が最も多い業種となりました。
法令違反があった事業場数の合計としては、17,594事業場です。
昨年は25,770事業場だったため、8,176事業場減少しています。

また、上記を含めて監督指導実施事業場数全体の合計としては、24,042事業場なので、昨年の32,981事業場より8,939事業場も減少しています。

この大幅な減少に関しては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が影響していると考えられます。企業や業種によってさまざまな事情がある中、手放しで喜べないものの、違法残業などが減っていることは望ましい結果でしょう。

また、事業場の規模別に見た場合、昨年同様に「10~29人」の従業員数を抱える事業場が最も多く監督指導の対象となりました。

事業場規模別の監督指導実施事業場数>

企業規模別に見た場合だと、従業員数「300人以上」の企業が最も多い監督指導の対象でした。

企業規模別の監督指導実施事業場数>

「労働時間45時間以内への削減」指導が最多

つづいて、過重労働による健康障害防止のための指導状況です。

監督指導を実施した事業場のうち、全9,676事業場に対して、長時間労働を行った労働者へは医師による面接指導を実施するなどの対策を講じるように指導したとのこと。
指導事項の内訳については、下記のとおりです。

最も多く指導があったのは「月45時間以内への削減」について。
労働時間を削減するための具体策を講じて、着実な実施に努めることを指導しています。

<過重労働による健康障害防止のための指導状況>

時間外労働の実態

監督指導を実施した結果、違法な時間外労働があった8,904事業場の中でも時間外労働・休日労働が最長の者を確認したところ、下記の通りになりました。

「80時間以下」が最多で、前年度は9,808事業場だったところ、3,886事業場も減少して5,922事業場です。
全体的に減少したとはいえ、「200時間超」の労働者が依然として100近くいることは看過できない状況でしょう。

<時間外・休日労働時間の最長者の実績(労働時間違反事業場に限る)>

また、労働時間の管理方法においては、タイムカードをもとにしているところは9,088事業場で最多となり、続いて自己申告制の7,126事業場が2番目に多い結果となっています。PCの使用時間の記録をもとにしている事業場が最も少なく、1,680事業場です。

コロナ禍によって拍車がかけられた在宅勤務の普及もあり、労働時間の管理方法もますます多様化がみられます。

しかし、新型コロナウイルス感染症が流行し始めてもう1年半以上が経ちました。
コロナ禍での仕事の仕方についても定着しつつある今、改善策を見出し実行していきたい頃です。
このコロナ禍をバネにして、労働環境が少しずつでも是正されていくことに期待します。

<参考>
厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和2年度の監督指導結果を公表します」

投稿 時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果<令和2年度版>を公表産業保健新聞|ドクタートラスト運営 に最初に表示されました。

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