視覚障害者も健常者も手で触れて味わう彫刻展 今年で30回目 神奈川・藤沢

視覚に障害のある来場者に自分の作品を説明する桒山さん(左)=藤沢市民会館第1展示集会ホール

 視覚障害者と健常者が共に彫刻鑑賞を楽しむ「手で触れて見る彫刻展」が21日、藤沢市民会館第1展示集会ホール(同市鵠沼東)で始まった。同市在住の彫刻家桒山(くわやま)賀行さん(73)が「彫刻で表現した造形は手に触れて、それぞれの感覚でイメージすることができる」と考え、1992年からスタート。今年で30回を数える。会場には同展をきっかけに彫刻を始めた視覚障害者の作品も並ぶ。

 「鳥はこのように翼を広げて飛ぶのですね。生まれて初めて翼の形を知った」。約30年前、桒山さんのアトリエを訪れた視覚障害者の知人が、感激した様子で話したという。作品はハトが羽を広げて飛んでいる姿をかたどったブロンズ像だった。

 「視覚に障害のある人が健常者と共に彫刻の造形に触れ、楽しんでもらう場を提供したい」と、藤沢市などの支援を得て同展を始めることになった。

 以降、30年近くにわたり、同市総合市民図書館点字図書館が主催し同展を開催。昨年は30回の節目になるはずだったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止に。2年ぶりの開催に桒山さんは「回数を重ね、彫刻を手で触れて見るという発想が徐々に理解されるようになってきた」と語る。

 今回の展示では、桒山さんが「日本の歌」をモチーフに制作した作品をはじめ、主宰する彫刻教室「土曜会」の生徒の作品約80点のほか、8年ほど前に大阪府茨木市から同展を鑑賞しにきて以来、彫刻を作り続けている視覚障害者の男性の作品も並ぶ。

 桒山さんは「視覚に障害のある人も、障害のない人も会場を訪れ、どんどん作品に触れてほしい」と話している。

 24日まで。入場無料。午前10時~午後5時。問い合わせは、同市総合市民図書館点字図書館担当電話0466(44)2662。

© 株式会社神奈川新聞社