「死刑に処することが相当」。検察官が求刑を告げると久保木愛弓被告は、表情を変えず数回瞬きを繰り返した。一斉に席を立った報道陣を一瞥(いちべつ)後、視線を正面に戻した。
初公判と同じグレーのスーツ姿の被告は椅子に深く腰掛け、ベージュのハンカチを両手で軽く握っていた。被害者参加制度で意見陳述した遺族が声を詰まらせながら怒りや悲しみを訴える中でも、正面を見据え、じっと聞き入った。
弁護人が犯行当時は心神耗弱状態だったとして無期懲役を主張した後、被告は最終意見陳述のために証言台の前に立った。用意していた紙を開き、3人の被害者への思いをそれぞれ読み上げた。
「私が消毒液を混入しなければ、興津朝江さんは元気に退院できました」「西川惣蔵さんはご家族に見守られながら静かに旅立てました」「(亡くなった日が誕生日だった)八巻信雄さんは一つ歳を重ねるはずでした」
「かけがえのない大切な命を奪ってしまった」と改めて謝罪し、「死んで償いたいと思っています」との言葉で締めくくった。