NASA新型ロケット「SLS」ついに完成! 新型宇宙船「オリオン」初飛行の打ち上げは2022年2月に

【▲ SLS(スペースローンチシステム)初号機へのオリオン宇宙船搭載作業の様子(Credit: NASA/Frank Michaux)】

アメリカ航空宇宙局(NASA)は現地時間10月22日、開発中の新型ロケット「SLS(スペースローンチシステム)」への新型宇宙船「オリオン(オライオン)」の搭載作業が完了したことを発表しました。SLSとオリオン宇宙船の双方にとって初飛行となる無人の「アルテミス1」ミッションは、2022年2月に実施される予定です。

SLSはNASAが推進する有人月面探査計画「アルテミス」などで用いるべく開発された大型ロケットで、並行して開発が進められてきたオリオン宇宙船をはじめ、将来の探査機などの打ち上げに使用されます。2011年に開発がスタートしてから10年、ついにSLSの初号機が組み立てを終えたことになります。

【▲ 飛行するSLSの想像図(Credit: NASA/MSFC)】

中核となるのは高さ65m・直径8.4mのコアステージで、高さはNASAのロケットステージとしては過去最大。コアステージには2011年に退役したスペースシャトルに搭載されていた「SSME」の改良版である「RS-25」エンジンが4基搭載されており、今年3月には実際の飛行時間に匹敵する8分強の燃焼試験に成功していました。

コアステージの側面には飛行の前半をサポートする2基の固体燃料ロケットブースターが取り付けられ、上段ステージ(第2段)には初期の運用で用いられる「ICPS」(Interim Cryogenic Propulsion Stage、暫定的な極低温推進ステージ)や、月に42トンのペイロード(搭載物)を運べる開発中の「EUS」(Exploration Upper Stage、探査上段)が搭載されます。

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【▲ オリオン宇宙船の想像図(Credit: NASA)】

いっぽう、オリオン宇宙船はNASAにとってスペースシャトル以来となる有人宇宙船として開発されました。有翼型で広いペイロードベイ(貨物室)も備えていたスペースシャトルとは異なり、4名の宇宙飛行士が搭乗するクルーモジュールはアポロ宇宙船やスペースXの「クルードラゴン」のようなカプセル型が採用されています。

クルーモジュールの下部には欧州が製造を担当するサービスモジュールがアダプターを介して結合されています。サービスモジュールにはエンジンやソーラーパネルなどが備わっており、クルーモジュールが切り離されるまで推進力や電力を提供します。また、打ち上げ時にはクルーモジュールの上部に緊急脱出システム(LAS)が取り付けられ、緊急時にクルーモジュールをロケットから切り離して遠ざける役割を果たします。

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【▲ アルテミス1ミッションのプロセスを示した図。緑が往路、青が復路を示す(Credit: NASA)】

今回組み立てを終えたSLS初号機は、アルテミス計画最初のミッションでありオリオン宇宙船の無人テスト飛行でもあるアルテミス1ミッションの打ち上げに用いられます。SLS上段のICPSによって月へ向かう軌道に投入されたオリオン宇宙船は、月の公転方向に逆行する安定した軌道(DRO:Distant retrograde orbit、遠方逆行軌道)を飛行した後に地球へと帰還します。

また、ICPSには日本で開発された2機を含む合計13機の超小型衛星(CubeSat)が搭載されており、オリオン宇宙船の切り離し後に順次分離されます。アルテミス1ミッションの期間は26~42日間で、SLSやオリオン宇宙船だけでなくミッションを支える通信ネットワークなどの能力もテストされる予定です。

アルテミス1は無人のミッションですが、続く「アルテミス2」ミッションからはいよいよオリオン宇宙船に宇宙飛行士が乗り込み、2024年の実施が予定されている「アルテミス3」ミッションでは半世紀ぶりに人類が月面に降り立つことになります。月面での持続的な探査活動、そして将来の有人火星探査も見据えるアルテミス計画では、月の南極に埋蔵されている水の氷の探査や月のレゴリス(細かな砂)から酸素を抽出する技術の実証実験なども計画されています。有人月面探査再開の第一歩となるアルテミス1ミッション、その成功が期待されます。

Image Credit: NASA
Source: NASA
文/松村武宏

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