コロナ禍の修学旅行 「一生の思い出」実施へ奔走 代理店、学校 感染対策に全力

修学旅行生は入館時、サーモグラフィーで検温を受けていた=長崎市、稲佐山観光ホテル

 新型コロナウイルス感染が全国的に落ち着き、県境を越える人流が戻りつつあるが、引き続き感染への対策や警戒が必要とされる。軒並み延期されていた修学旅行も実行に移す学校が増えてきたが、長崎県内の中学校に子どもを通わせる保護者からは、不安視する投稿が長崎新聞の情報窓口「ナガサキポスト」に届いている。学校や旅行関係者が取り組むウィズコロナ時代の修学旅行を取材した。

 今月8日、長崎市曙町の稲佐山観光ホテル。大阪府から来た中学生たちが大型バスから次々と降りてきた。アルコールスプレーを持ったホテルスタッフ2人が笑顔で出迎え、生徒一人一人の手指を消毒。館内に入ると、サーモグラフィーで検温した。

 この中学校は4月に修学旅行を予定していたが、当時の大阪府は第4波の真っただ中。校長は「何とか実施できてほっとしている。延期に応じていただき助かった」とホテルの対応に感謝した。

 県内の学校も同様の事態にさらされた。8月19日、県独自の緊急事態宣言が県全域に発令。県内約90校の修学旅行を手掛ける旅行代理店「県営バス観光」(長崎市)によると、9月上旬に出発予定だった学校の多くが急きょ延期を決定した。

 30年近く修学旅行に携わる同社営業部次長の城臺(じょうだい)研吾さんは「何とかして子どもたちを修学旅行に行かせてあげたいというのは私たちも先生方と同じ。一生の思い出になるから」と関係先との調整に奔走した。

 さらに「宿泊先や交通機関も協力的で、感染対策を可能な限り努力してもらっている」と城臺さん。1部屋に泊まる人数を減らし、大浴場を使わず部屋ごとに1人ずつ入浴するケースもあるという。交通機関は換気や消毒を徹底。乗客には手指の消毒やマスクの常時着用を要請している。

 校長経験がある長崎市教委の担当者は「教室の環境をバスや宿泊施設に置き換えられるくらいの対応をしてもらっている」と話す。

 コロナ禍によって行き先を県内に変更する県内小中学校も増加。同市教委担当者は「感染状況は先が読めず、県内の方が保護者には安心感がある。万が一、子どもが体調を崩したときに迎えに行ける」とメリットを強調する。

 9月中旬、島原市内のホテルから城臺さんに「長崎の子どもは素晴らしい」と連絡があった。修学旅行で訪れた長崎市立小の児童たちは食事中の「黙食」など感染防止にしっかり取り組んでいたという。

 城臺さんは「各学校はコロナ禍に必要なマナーを日ごろから指導している。子どもたちも修学旅行に行くためにルールを守ろうという意識が高い」。一方で保護者説明会では不安の声が出ることもある。「できるだけ丁寧に説明し、これからも可能な限りの対策をしたい」と話す。

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