第2回:伊藤銀次のプロデュースイベント「BRITISH COVER NIGHT」汐留PITで開催!  1989年 4月27日 ロックイベント「BRITISH COVER NIGHT」が汐留PITで開催

『第1回:伊藤銀次のプロデュースイベント「BRITISH COVER NIGHT」汐留PITで開催!』からのつづき

伊藤銀次の演奏で開幕!「BRITISH COVER NIGHT」

1989年4月27日、僕のプロデュースのもと、『BRITISH COVER NIGHT』が、ついに汐留PITで開かれることになった。

すごいアーティストたちが次々出演するスペシャルなライヴだけど、どのアーティストも自分の持ち曲を歌わず、めいめい大好きなイギリスのロックアーティストの曲をカバーするという、こんなマニアックなイベントにお客さんたちは果たしてきてくれるのか… と心配だったが、当日蓋を開けてみると、3,000人を集客可能な汐留PITはほぼ満員。おお、よかった!!

そしていよいよ開会!! 開会宣言としての挨拶を済ませたら、まずはこのイベントのホストである僕の演奏からスタート。

僕が選んだ1曲目は、華々しい打ち上げ花火のようにドカンとオープニングを飾るにふさわしい、ディープ・パープルがハードロックサウンドに定着する以前の「ハッシュ」。そして2曲目は、大好きな英国パブロックシーンの中心人物、ニック・ロウの大ヒット「恋するふたり(Cruel To Be Kind)」を軽やかに。

そして3曲目は、10代の頃にしびれた、ドアーズの「ハートに火をつけて(Light My Fire)」とともに僕の中での二大サイケ名曲のひとつ、ピンク・フロイドの「シー・エミリー・プレイ」。ほんとこんな機会でもなければ生涯演奏することはなかっただろう3曲。アマチュアだった頃のようなウキウキな気分で演奏させてもらった。

素晴らしいロックパフォーマーぶりを印象付けた高橋研

そして僕があたためておいたステージに、ゲストのトップバッターとして上がってくれたのは、中村あゆみさんの大ヒット「翼の折れたエンジェル」の作者でありプロデューサーの高橋研君。

彼がまだブレイクする前に、はじめて他者に提供した曲を編曲したのが僕だったという不思議な縁でつながっていたからか、このイベントに声をかけたらこころよく引き受けてくれた。

高橋研君がこの日歌ったのは、彼がこよなくリスペクトする、英国パブロック界のいぶし銀、グラハム・パーカーの「ホワイト・ハニー」と、ロックミュージックの古典、キンクスの「ユー・リアリー・ゴット・ミー」の2曲。

ドスの効いたハスキーヴォイスで目一杯男臭い世界を展開、彼が優秀なプロデューサーであるだけではなく、すばらしいロックパフォーマーであることを聴衆に印象づけてくれた。

東京少年・笹野みちる、60sの名曲を聴かせたサプライズ

続くアーティストは、東京少年の笹野みちるさん。ステージは “男の世界” から一転して、キュートでフォーキーな空気感に。

80年代ににわかに台頭したJ-Rockシーンは男性ばかりではなかった。山下久美子さんのような、観客総立ちイケイケなガールロックから始まって、やがて、スザンヌ・ヴェガのようなネオ・アコ的フォーキーなガールポップも生まれてきたのが80年代後半。その代表的なアーティストが遊佐未森さんやこの東京少年。ボーイッシュで中性的な魅力の笹野さんの歌を中心とした、気負いのないナチュラルなサウンドが大好きで、このイベントへの参加をお願いした。

その笹野さんがどんな曲を選んでくれるのか興味津々だったのが、なんと、ビートルズの「ノー・リプライ」と、ジョージ・ハリソンがプロデュースし、イントロに印象的なスライドギターを聴かせてくれた、英国ポップグループ、バッドフィンガーの「デイ・アフター・デイ」!!

東京少年のイメージにぴったりのブリティッシュ・カバー。彼女の世代からこうした60sの名曲が出てきたのは意外だったけれど、うれしいサプライズだったね。

絶対出てほしかったアーティスト小林克也

80年代の英米のMTVの登場に呼応して、その日本版ともいえる『ベストヒット USA』は日本のテレビで人気を博した。その番組のホストがご存知、小林克也さん。克也さんは、流暢に英語をあやつりながら、アメリカンポップスの情報を伝えてくれるDJとしての側面以外に、「小林克也&ナンバーワンバンド」のリーダー&ボーカリストとしても活躍していた。

克也さんとは、杉真理君を介して知り合い、気があって、ジョン・レノンの「イマジン」と「真夜中を突っ走れ(Whatever Gets You Through The Night)」のカバーヴァージョンを東芝EMIから1986年に録音した間柄。このライヴには絶対出てほしかったアーティストなのだ。

克也さんが選んだのはストーンズの「ホンキー・トンク・ウィメン」と、ディープ・パープルの代表曲、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」だけど、これがさすがに克也さんだけに一筋縄ではいかないカバー。特に「スモーク・オン・ザ・ウォーター」がすごかった。あの誰でも知ってる、♪ダッダッダー ダッダッダダー というギター・リフに合わせて、「♪ ぽっぽっぽー はとぽっぽー」と歌うという、さすが諧謔を得意とする「スネークマン・ショー」のメンバーでもある、まさに克也さんならではの怪カバー。

克也さんに煽られた汐留PITいっぱいのお客さんが、みんなでディープ・パープルのギター・リフに合わせて歌う「はとぽっぽ」の大合唱は壮観だったね。これぞカバーの醍醐味!

かって我が師大滝詠一さんがよくおっしゃっていた。

「カバーをやらせてみるとほんとにオリジナリティがあるかどうかわかるんだよ」

まさにそれを体現化するかのような「BRITISH COVER NIGHT」!!

会場はますますヒートアップして、さらに続くのであった。

To be continued

カタリベ: 伊藤銀次

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