引退決断の鷹ベテラン捕手・高谷「時が来た」と悟った2つの理由

引退会見で語った高谷裕亮(東スポWeb)

ソフトバンク・高谷裕亮捕手(39)が1日、ペイペイドームで引退会見を行った。「15年間のプロ野球生活に終止符を打ち、引退する決断をしましたので、ここに報告させていただきます」とあいさつすると、現役への未練を断ち切り「意外とスッキリしています」と涙はなかった。

本人の希望でスーツ姿ではなく、ユニホーム姿で登壇。家族に最後のユニホーム姿を目に焼き付ける機会をつくった。会見にはサプライズで和田毅投手(40)が花束を持って登場。すぐにマウンドに場所を移すと、和田の要望で〝最後のバッテリー〟を組んで終止符を打った。

2007年入団でホークス一筋15年、堅実なリードで通算643試合に出場した。昨オフに受けた左膝手術の影響で今季は20試合の出場に終わり、来季の戦力構想から外れた。「チーム全体に気を遣ってもらった。アップも一緒にできない、練習も制限がかかる。試合にだけ集中してくれればいいという環境をつくっていただいても、これくらいの状態だった。それを考えれば『時が来た』のかなと考えています」。朝起きて左膝が思うように動くかチェックするのが日常だった晩年を振り返り、決断の理由を語った。

また、高谷はもう一つの側面からも引退の時を悟ったことも明かした。「(正捕手である甲斐)拓也の下が育っていない。そういうのが目に入るし、聞く。逆に考えれば僕がいたことで弊害になっていたのもゼロではない。その要因に僕もあったのかなと捉えることもあって、時が来たのかな…」。客観的にチームの捕手事情を考えて、引き際を受け入れた。工藤前監督をはじめ、とりわけ現場首脳陣からの信頼が厚かった高谷。頼りになる存在だけに、ここぞの場面で重用された。だが一方で、若手が2番手捕手として経験を積む機会を自分が摘んでいたのではないか、と考えることがあったという。

来季は二軍バッテリーコーチに就任する。常勝軍団を陰ながら支えてきた男は、秋季キャンプから後進の育成に力を注ぐ。

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