松田優作「探偵物語」で流れた “アザミ嬢のララバイ” と “うぬぼれワルツ” きょうで三十三回忌 32年前の今日 - 1989年11月6日松田優作逝去。享年40、存命なら72歳。

第6話のオープニングは中島みゆき「アザミ嬢のララバイ」

松田優作主演のテレビドラマ「探偵物語」。私が中学生の頃、日本テレビの火曜9時枠でオンエアされていたいわずもがなの名作である。

それは、当時の男子中高生の生き方に多大なる影響を与えたドラマといってもいい。その第6話「失踪者の影」についてちょっと語ろう。

その話は、中島みゆきの歌で始まるオープニングだった。冗談でプロポーズしたカレを追いかけ、山梨の大月から上京してきた亜湖演じるキノシタレイコちゃん。彼女が工藤探偵事務所を訪れるところからドラマは始まる。

ララバイ
ひとりで眠れない夜は
ララバイ
あたしをたずねておいで

ララバイ
ひとりで泣いてちゃみじめよ
ララバイ
今夜はどこからかけてるの

あまりにも押しの強い捜索依頼をしぶしぶ受ける(フリをする)探偵だったが、田舎娘の身を案じ、彼女を大月に帰すべく新宿駅のホームまで見送る。そのシーン全体(3分強)にかかる曲が「アザミ嬢のララバイ」、物語のトーンを決定付ける見事な選曲だ。

話のあらましを書くことは避けるが、一言でいうと「バカな女がバカな男に一方的に惚れ込んで、最終的にはバカな男を庇って死んでしまう」というダサいお話。

でもこのストーリー、全27話ある「探偵物語」の中でも間違いなくベスト5に入る神回なんだよね。

ラストシーンは木の実ナナ「うぬぼれワルツ」

コミカルなタッチを取り入れたテンポ抜群の展開はいつものことだけど、だからこそラストシーンが切ない、切なすぎる。死んでしまったレイコちゃんを乗せたメリーゴーランドがゆっくりと回る情景はテレビドラマ史上に残る名シーンだ。

そして、その切なさを包み込むように流れる曲が、木の実ナナの歌う「うぬぼれワルツ」なのである。

踊りましょうよ
こんな時こそ
ラッタッタ ラッタッタ
うぬぼれワルツ

あんた男前
私いい女
ラッタッタ ラッタッタ
うぬぼれワルツ

―― 最後に探偵は云う。

「人間ってのはさ、なんかこう、あの、冗談か本気かわかんない、ギリギリんとこで生きてんじゃないのかしら?」

この「探偵物語」というドラマの特徴を見事に言い切った台詞である。とにかく、工藤俊作という探偵からは本当の優しさを教わったな。

アザミ嬢のララバイ / 中島みゆき
作詞:中島みゆき
作曲:中島みゆき
編曲:西崎進
発売:1976年(昭和51年)4月25日 ※アルバム「私の声が聞こえますか」収録

うぬぼれワルツ / 木の実ナナ
作詞:門谷憲二
作曲:西島三重子
編曲:大村雅朗
発売:1978年(昭和53年)7月7日

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