敏腕代理人・ボラス 各球団のタンキングを「競争のがん」と痛烈批判

球界で最も影響力のある代理人として知られるスコット・ボラスは、各球団がより上位のドラフト指名権を得るために意図的に戦力ダウンする「タンキング」について「競争のがん」であると痛烈に批判した。今季はブレーブスがシーズン途中に獲得した選手たちの活躍もあり、1995年以来26年ぶりのワールドシリーズ制覇を成し遂げたが、それは「勝利を諦めた他球団がベテラン選手を放出した結果である」と指摘。メジャーの現状について「シーズンのある時点で半数のチームが非競争的になってしまう」と述べた。

ボラスは「これはイースターバニー(=復活祭の卵を運ぶウサギ)が腐った卵を届けているようなものだ」と語り、半数のチームがシーズンの途中で勝利を放棄してしまう現状を批判。「どのチームも『地区優勝できないし、ポストシーズンにも届かないから、これしか選択肢がないんだ』と言って勝つことを諦めてしまう」と安易にタンキングに走るフロントオフィスを皮肉った。

ブレーブスが7月に相次いで獲得した4人の外野手の活躍もあってワールドシリーズ制覇を成し遂げた今季を振り返り、ボラスは「私たちは60日間で優勝が決まるのを目にすることになった」とコメント。「8月1日の時点で勝率5割以下のチームでも、もはや競争する気のないチームから4~5人の選手を獲得することによって、わずかなコストでチームやシーズンの全体像を作り変えることができる。膨大な費用や計画、知性をかけて創造され、100勝以上を記録したチームが不利益を被ってしまうんだ」とメジャーの現状への懸念を表明した。

ボラスは勝率下位のチームが上位のドラフト指名権を得られる制度について「底辺への競争の誘因になっている」と指摘。「シーズンのある時点で半数のチームが非競争的になり、主力選手をトレードし、シーズンを本来の目的とは全く違うものにしてしまう。トレードとは、従来は勝つために行うものだったはずだ」と批判した。

「負けを望むチーム」の存在が選手の年俸上昇の障害になると考えているボラス。選手会の役員8人のうち5人(ザック・ブリットン、ゲリット・コール、ジェームス・パクストン、マックス・シャーザー、マーカス・セミエン)はボラスの顧客であり、今オフの労使交渉では選手会側の主張に多少なりともボラスの意向が反映されることになるかもしれない。

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