アストラゼネカとモデルナ、心不全へのmRNA療法「AZD8601」の第2相で主要評価項目達成を発表 mRNA療法「AZD8601」が、心不全を対象とした第IIa相試験で主要評価項目達成

【11月16日 Insights4 プレミアム】アストラゼネカとモデルナは、両社が共同で開発しているmRNA療法「AZD8601」が、心不全を対象とした第IIa相EPICCURE試験で安全性と忍容性の主要評価項目を達成したと発表した。

EPICCURE試験では、安定した冠動脈疾患を有し、左心室駆出率(LVEF)が中等度に低下、待機的冠動脈バイパス術を受けている11名の患者が対象としています。7名には、アストラゼネカ社が「ネイキッド(Naked)」と呼ぶmRNAを直接心筋に注射、4名にはプラセボを投与しました。この試験では、死亡例や治療に関連した重篤な有害事象はなく、AZD8601に関連した感染症もなかったと発表しています。

有効性について、更なる試験へ移行する前向きな「傾向」が見られた

有効性に関して、LVEFの増加および機能的な患者報告を含む探索的有効性評価項目において、治療を受けたグループに有利な「傾向」が観察されたと述べています。

6ヵ月後の追跡調査では、AZD8601を投与された7名の患者様全員のNT-proBNP値が心不全の限界値を下回ったのに対し、プラセボ群では1名の患者のみでした。アストラゼネカ社は、有意な効果を示すデータは限られていますが、AZD8601のさらなる試験に移行する機会を与えていると述べています。

アストラゼネカのバイオ医薬品研究開発部門責任者であるMene Pangalos氏は、以下のようにコメントをしています。

「心不全やその他の虚血性血管疾患の患者さんに修復や疾患修飾の選択肢を提供するために、VEGF-Aの産生を刺激するmRNA治療薬の可能性を示しています」

AZD8601が再生的な血管新生の可能性を持つという示唆も

両社は、脂質を封入せずに生理食塩水で製剤化したAZD8601により、VEGF-Aの産生を促進するmRNAの指示を届けることができると考えています。同社は、2型糖尿病患者の前腕部にAZD8601を皮内注射した第I相試験の結果を発表しています。この注射により、投与24時間後に局所で機能的なVEGF-Aタンパク質の発現が認められ、投与4時間後および7日後には局所で一過性の皮膚基礎血流の増加が認められたという。「この結果は、AZD8601が再生的な血管新生の可能性を持つという示唆を裏付けるものでした」とモデルナは述べています。

アストラゼネカ社とモデルナ社は、2013年に、心血管疾患、代謝性疾患、腎疾患、および癌を治療するためのmRNA治療薬を開発するために、最大4億2,000万ドルのライセンス契約を締結しています。

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