台湾侵攻は習近平の「公約」だ|和田政宗 「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」と米インド太平洋軍のデービッドソン司令官。この「6年以内」は何を意味するのか。「本音」で語れる政治家、和田政宗参議院議員が徹底分析!

侵攻の危機にさらされている台湾

今月12日、13日と第7回「日台交流サミット」in神戸が開催された。12日の歓迎交流会は、日台交流関係者や地方議員を中心に510人が参加し、盛大なものとなった。

謝長廷・台北駐日経済文化代表処代表(駐日台湾大使)、神戸市長、兵庫県知事、私を含め国会議員は3人が参加し、私からは東日本大震災10年にあたり改めて台湾からの支援への感謝と、台湾と日本をめぐる安全保障環境が厳しさを増すなか、日米台の防衛協力の重要性と実行するために何が必要かについて述べさせていただいた。

主催者側によると、中国からは開催しないよう中止要請があったとのこと。しかし、それを聞きつけた地方議員など100人が追加で参加を申し込んだ。日本と台湾の友好と協力はどのような妨害があっても揺るぎないものであるのだ。

今、台湾は中国による侵攻の危機にさらされている。一部の学者や評論家は「そのようなことは絶対無く、危機を煽っている」と述べるが、危機を煽っているのは中国の行動そのものだ。

今月上旬、世界を衝撃的なニュースが駆け巡った。

米国の民間研究機関「米海軍協会」が衛星からの撮影画像を公表したのだが、中国西部の砂漠に、米軍の原子力空母や駆逐艦2隻の実物大の模型が設置されていたのである。弾道ミサイルの発射実験の演習場に作られており、レールに乗った模型もあった。

模型の1つは、原子力空母の最新鋭艦で来年にも一番艦が配備される予定のフォード級と酷似。すなわち中国は対米戦を考え、対艦弾道ミサイル実験を行っていたのである。

中国共産党40年ぶりの「歴史決議」

「6年以内に中国が台湾を侵攻する可能性がある」

米インド太平洋軍のデービッドソン司令官は3月、米上院軍事委員会の公聴会でこう証言した。この証言の後、日本の主要メディアにおいても台湾危機がようやく報じられるようになったが、この「6年以内」は何を意味するのか。

6年後は2027年。実はこの年は、習近平国家主席の3期目の任期が終わる年である。中国は2018年に憲法を改正し、それまで2期10年だった国家主席の任期を3期目以降も継続できるとした。この際、習近平国家主席は、なぜ3期目の任期が必要かについて、「台湾を統一するため」と説明している。

しかし、香港の状況などを見れば「平和的な統一」などあり得ない。武力侵攻による統一となることは明らかであり、米インド太平洋軍司令官はその点を冷静に分析をし、述べたのである。

そして、今月、中国共産党「6中全会」(第19期中央委員会第6回全体会議)が開かれ、40年ぶりに「歴史決議」が採択された。毛沢東、鄧小平以来で、この2人は「歴史決議」の後、完全な権力基盤を確立した。今回の歴史決議は、まさに習近平国家主席の権力基盤を固めるもので中国共産党において習主席を唯一無二の存在とするものとなった。

こうして習近平国家主席への権力集中が進むことで、より台湾侵攻の危機は高まっているのである。台湾侵攻は中国共産党の悲願であるばかりか、習国家主席の「公約」だからだ。

台湾危機は日本の危機そのもの

台湾危機に日本はどのように対処すべきであるか。

まず持たなくてはならない意識は「台湾危機は尖閣危機」であるということだ。「台湾で有事が起きても日本はあまり関係ない」という論があるが、それはまったくあり得ない。なぜなら、中国は「尖閣は台湾の一部だから我が国の領土」と主張しているからである。

歴史と事実をまったく無視した主張であるが、実際に中国が勝手に自国領域と主張している「第一列島線」のなかには尖閣が含まれている。台湾侵攻と同時に尖閣侵攻は行われる。すなわち、台湾危機はどこか別世界の話ではなく、日本の危機そのものなのである。

こうした意識のもと、日本は、中国を抑止するための強力なリーダーシップをアジア太平洋地域で発揮しなくてはならない。すでに菅政権で日米豪印の協力の枠組み「クアッド」が成立したが、米国頼みでなく日本主導で「自由で開かれたインド太平洋」を構築していくべきだ。

「自由で開かれたインド太平洋」というフレーズは、日本が提唱したもので初めて世界のスタンダードとなった外交構想と言える。強力な安倍外交の成果であるが、インド太平洋地域での日本のリーダーシップを世界各国も求めているのである。

今こそ憲法改正を!

防衛力の強化は喫緊の課題であり、台湾危機、尖閣危機を鑑みれば、世界の主要国の標準である防衛費の対GDP比2%は実現しなければならない。中国の軍拡には現在の予算では到底対処できない。すなわち国土や国民を守れない。

さらに根本は憲法改正である。国家は国土と国民を守るためにあるはずだが、現行憲法はご承知の通り、いざというときに国土や国民を守る手段も方法も明記されていない。

戦後初めて我が国と国民が直接的に攻撃を受ける可能性がある危機的状況のなかで、「あの時ああしていれば」では遅い。衆議院、参議院とも「改憲」「加憲」勢力が、憲法改正の発議に必要な3分の2を超えている。世論調査を見ても、国民の多数は憲法改正を望んでいる。

いつまでたっても憲法改正を発議せず、国民全体の判断を仰げないことは国会の怠慢と言われても仕方がない。国会議員は今こそ国土や国民を守るため、憲法改正の実現に行動する時である。早急に国会で議論し発議につなげるよう自民党内においてさらに強く提起していく。

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和田政宗

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