北前船の歴史伝える 府中八幡宮の笏谷石鳥居、見やすい位置へ 上越市西本町3 町内住民にお披露目 

 「府中八幡宮の文化財を愛する会」(石井春男会長)は20日、上越市西本町3の八幡会館で府中八幡宮の歴史を知る勉強会を開いた。かつて同宮の鳥居に使われていた笏谷石(しゃくだにいし)製の柱と説明看板のお披露目が行われ、町内住民ら約20人は北前船で栄えた直江津の歴史に思いをはせた。

 鳥居は市の地域の宝「北前船がはこんだもの」に認定されている。上越の海運の歴史を知る貴重な資料であるため、長い間拝殿下に収められていたものを市の地域活動支援事業を活用し、見えやすい位置に移動。アクリル板で保護し、由緒を伝える看板を設置した。

笏谷石製の鳥居の歴史的価値を話す石井会長

 柱には1645(正保2)年8月、小栗茂吉によって寄進された旨が刻まれている。小栗茂吉は高田藩主・松平光長の筆頭家老を務めた人物で、「越後騒動」で知られる小栗美作の大叔父に当たる。

 笏谷石は福井市の足羽(あすわ)山で採掘されていた石材。薄緑色で、水にぬれると鮮やかさを増す。北前船の時代、直江津地区を中心に大量に運び込まれ、今も寺社に残る。笏谷石製の鳥居は直江津でしか見られず、また年号が刻まれていることが、日本海海運の歴史を知る手掛かりとして貴重とされる。

 残る鳥居柱は1本で、長さは約2メートル。刻まれた銘文がアクリル板越しに読めるように置かれている。同会の事務局を務める「まちおこし直江津」の佐藤和夫代表(75)は「鳥居から地域の歴史が見えてくる。孫世代にも説明し伝えてほしい」と住民に歴史的価値を話し、石井会長(82)は「江戸時代から続く神社の歴史を広く伝えたい。次の世代に引き継ぎたい」と願った。

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