ロッド・スチュワート「ヘラクレスの涙」いま、ノリに乗ってる76歳の現役シンガー  2021年 11月24日 ロッド・スチュワートのアルバム「ヘラクレスの涙」がリリース

ロッド・スチュワートのキャリアピークはいつ?

さてロッド・スチュワートの名を聞いて、あなたは何を思うのだろう?

キャリア60年近い超ベテラン現役シンガーだけあって、60代から40代を中心にかなり幅広い層にその名を認知される、ほぼ全世代がロッド・スチュワート=ビッグネームという印象を抱いているに違いない。ではそんなロッドのキャリアピークはいつなのか? と問われれば、それはもう迷いなく「全米ナンバーワンを輩出していた1970年代から1990年代前半くらい」と答えるのではないだろうか。

特にビッグヒットを連発していた1970年代こそがそのピークと捉えるのが大半と思われるが、もちろんそれは間違っていない。しかし実は21世紀に突入後の2000年代以降、およそこの20年間こそがある意味ロッドが新たなピークを迎えていたことを、ほとんどの人が認識していないと言っていいだろう。

そうロッド・スチュワートの(新たな)キャリアピークは、彼が50歳代後半となった2000年代前半以降なのだ。

四半世紀にわたるコンスタントなシングルヒット

1970年代から1990年代前半までのおよそ四半世紀にわたって、ロッドはコンスタントなシングルヒットを残している。ビルボードのシングルチャートにおいては、トップ40が30曲以上、ナンバーワンは4曲。50代以上ならば、ソロとして初ブレイクとなった「マギー・メイ」(1971年)、8週連続1位を記録した「今夜きめよう」(1976年)、ディスコにアプローチした「アイム・セクシー」(1979年)、40代以上ならば、ブライアン・アダムス、スティングと共演した「オール・フォー・ラヴ」(1994年)といったナンバーワンは青春の思い出として刷り込まれた作品であろう。

1990年代中盤以降になると、さすがにヒットチャートからは疎遠になっていき… 主に70年代に活躍していたアーティストが、オルタナティヴ、ヒップホップ、R&B、ビッグビート等々、新旗手が台頭してきた激動の90年代において失速していくのは、ある意味大衆音楽の常だったのかもしれない。50代に突入した(1995年~)ロッドは、多くの同世代男性歌手と同様、いわゆる “懐メロシンガー” になっていくのかと思われた。

1970~80年代を凌ぐロッド・スチュワートのキャリアピーク

2002年ロッドはレコードレーベルをJレコーズ(ソニー)へと移籍、アルバム『グレイト・アメリカン・ソングブック』をリリースした。80年代から企画していたという、古き佳きアメリカンポップのスタンダードカバー集。若き日々にウォーミングアップ時に歌っていた、いわばロッドの出自たる音楽をボーカリストの原点に戻ったアルバムだ。

なんとこれがビルボードのアルバムチャートで『スーパースターはブロンドがお好き』(1978年1位)以来のトップ5入り(4位)を果たしたどころか、米国で300万超を筆頭に各主要国でプラチナセールスを記録、70年代のアルバム売上に迫る勢いとなった。以降『グレイト・アメリカン・ソングブック』は2010年までの5作目まで、さらにロックンロール、ソウル、クリスマスのカバー集3作もリリース、そのすべてがビルボードのトップ5入りとなる。

1970~80年代を凌ぐかのようなキャリアピークが、ロッドに訪れたわけだ。同時に一時代を築いたベテランシンガーが、21世紀に第一線で生き残る理想的なひとつの方法を提示したのかもしれない。

今がいちばんアブラが乗っている!最新アルバム「ヘラクレスの涙」

もちろんこの新たなピークは、そもそもロッドのシンガーとしての確たる力量があったからというのは言うまでもない。さらには円熟味を備えたロックスターが、あらためて “歌” に真摯に臨みながら、“ボーカリスト” としての矜持みたいなものが、熱く聴き手に伝わってくるからとも言えよう。

ここ数年は2~3年おきにオリジナルアルバムを世に出しているが、70歳代に入ってこの精力的なコンスタントリリースは、新たなピークを継続しているとともに、ロッドが “ボーカリスト” として今がいちばんアブラが乗り切っていることを自覚している証しなのではないだろうか。

そんなことは、70代になってから(2015年~)のオリジナルアルバムを耳にすれば、手にとるようにわかる。最新アルバム『ヘラクレスの涙』(2021年11月)では、リラックス感と壮大な熱きソウルまでもが加味。ロッド流の “ソウルミュージック” を追求する現役シンガーとしての姿勢に、我々はただひれ伏すのみだ。

カタリベ: KARL南澤

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