干潟の貝に魅せられ 100種類以上生息する神奈川・三浦の小網代湾、調査員・小倉さんの遺作出版

漫画担当の江良弘光さんと、出版した本

 神奈川県三浦市・小網代湾の干潟にスポットを当てた本「干潟に生きる小さな貝たち~のどかで楽しい不思議な暮らし」が出版された。現地に30年以上通った調査員の貴重な成果を漫画入りで分かりやすく紹介。多様な貝の仲間を通じて森と一体となった干潟の尊さが伝わる。

 著者の小倉雅實さんは大学で生態学を専攻後、医療関係の仕事をしながら横浜から小網代湾の干潟に通っていた。NPO法人小網代野外活動調整会議理事でもあり、退職してから調査を本格化したが、昨夏にがんのため71歳で死去。本は一周忌にあたる8月21日に発行された。

 広さ約70ヘクタールの小網代の森に囲まれた干潟は関東で屈指の多様性を誇り、100種類以上の貝が生息している。特に、小倉さんは俵形のコメツブガイに注目。近年数を減らしているミリ単位の小さな貝で、干潟上部に生息する種類の産卵と成長過程を突き止めた。

 また、9個の目を持つ絶滅危惧種のソトオリガイや、長い触手をなびかせながら泳ぎ回るユキミノガイ、2枚の殻を屋根のように開いて移動するウロコガイ、体の中の藻類が光合成でエネルギーを作るシャコガイなど個性豊かな二枚貝の生態を取り上げている。

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