井上昌己初のビデオクリップ集「Balancin' Love」映像監督は岩井俊二
2021年12月８日に、井上昌己がデビューから約10年間在籍したトーラスレコード時代に発売された４つの映像作品が初DVD化され発売になる。今回このDVDセットには２タイトルのライブ映像と、２タイトルのクリップ集が収録されている。
前回の『井上昌己「LIVE & CLIP Collection」90年代の空気感が味わえる２つのライブ映像』に続いて今回ご紹介するのはクリップ集２タイトル。一つ目は、1991年11月27日に発売された井上昌己初のビデオクリップ集『Balancin' Love』だ。当時のミュージックビデオ（MV）はプロモーションビデオ（PV）と呼ばれ、あくまで楽曲をプロモーションするために制作されたものが主だった。
しかし、この『Balancin' Love』はかなり凝った作りがされている。何故なら、この作品の映像監督は、のちに映画監督として名を馳せる岩井俊二の手による作品だからだ。岩井俊二と言えば、当時多くのMVを手掛ける監督として有名だったが、90年代に入り短編映像とミュージックビデオを融合させた新たな作品に挑戦している。
井上昌己のディレクターは、岩井の手掛けた東京少年の作品を見て、「Balancin' Love」の監督を依頼したそうだが、ある意味当時の若い才能が結集された作品集とも呼べるだろう。たどたどしいながらもひたむきに演技に向き合う女優・井上昌己にも注目だ。岩井が映画監督を務めた映画「スワロウテイル」がブームになるのは、この時から数えて約５年後になる。
橋口亮輔や渋谷和行の監督作品も収録された「index」
そしてもう一つ初DVD化される作品が、1996年６月20日に発売された『index』だ。井上昌己の当時のMVを集めた言わば映像版ベスト的内容だが、すべての収録作品を著名な監督が手掛けている豪華な１枚だ。
「恋が素敵な理由」を岩井俊二が手掛けている他、当時映画『二十才の微熱』『渚のシンドバッド』が話題になった映画監督の橋口亮輔や渋谷和行の監督作品も収録されている。映像にはレコーディングを行ったダブリンの街並み、90年代の東京を闊歩する昌己の姿も映っているので是非お楽しみいただきたい。
インテリア、ファッション、メイク… 映像に垣間見る90年代
MVに出て来る、インテリア、ファッション、メイク等、1990年代の時代背景が垣間見れるのはとても貴重だ。コンサートシーン、バックヤードシーンのどこを取っても、笑顔で元気な井上昌己が映し出されているが、実はその裏側で流した涙も多かったのではないだろうか。
1989年のデビューを以来、約10年間在籍したトーラスレコード時代に残された井上昌己の貴重な映像４作品が今回初DVD化になるが、懐かしさだけでなくどこか胸が熱くなってくるのは何故だろうか？ あれからかなりの歳月が流れているはずだが、現在の井上昌己とさほど印象が変わらないのは驚異だ。
1990～1996年と言えば、CDを買うことが娯楽の一つであり、アーティストの作品にも潤沢な制作費が掛けられていた時代だ。今回発売になる作品は、そんな時代に制作された贅沢な作品でもある。特に、かつて井上昌己のファンだったが、しばらく離れていた方には是非見ていただきたい映像集だ。そして、ご覧になった方には「懐かしさだけではない何か」を再発見していただくきっかけになればと思っている。
カタリベ: 長井英治
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