大磯のシンボル松並木 保全活動が岐路に

維持管理が課題となっている松並木=大磯町大磯

 大磯町のシンボルとなっている松並木の保全活動が岐路に立っている。専門的知識に基づいて松並木の維持管理に取り組んできた地元の中心的存在だった岡田豊太郎さんが2年前に亡くなり、民間の担い手が不在となっている。国や町が害虫駆除などに取り組んでいるが、民間の力なしでは今後、管理不足による樹勢の衰えなどが懸念される。住民からは「松並木がしっかり後世に残るように守ってほしい」との声が上がる。

 「江戸時代の人たちも同じ景色を見ていたと思うとロマンを感じる。この景観は町の大切な財産」。大磯町大磯の町道沿いの松並木を見つめ、地元の男性(72)がつぶやいた。

 この町道は江戸時代には東海道として多くの人々が往来し、周辺は宿場町として栄えた。現在も沿道の松並木は地元住民に親しまれる誇りだ。

 2008年からは岡田さんを中心とした地元のNPO法人「大磯町内の松並木敷地を大切にする会」が維持管理に努め、景観を守ってきた。

 しかし、岡田さんが19年に享年82歳で他界した。同会は解散し、保全活動は途絶えているという。現在は松の根元に落ち葉が積もって物悲しさが漂う。近くに住む女性(82)は「岡田さんがいた頃はきれいな景観だった。町が主導して維持管理をしてほしい」と話す。

 町は、岡田さんが管理していた大磯こゆるぎ緑地(同町西小磯)なども含め、業務委託によって害虫駆除や間伐などを行っている。それでも、町の担当者は「こまめにできず、十分な状況とは言えない」とし、維持管理を担う市民団体などを探している。

 「落ち葉かきや剪定(せんてい)などこまめに手入れをしないと、いずれ樹勢に悪影響を及ぼす。行政の積極的な取り組みが必要」。島根県で松並木の保全活動を続ける樹木医の槙野浩二朗さん(61)はそう指摘する。一方で「行政だけでは限界がある。松並木に関心を持ってもらう広報活動に力を入れ、住民の保全への意識を高めることが重要だ」と話している。

© 株式会社神奈川新聞社