第22回グリーン購入大賞に10団体、BtoBや中小企業の再エネ電力調達が目立つ

環境配慮型製品やサービスの情報提供と市場拡大を推進する団体、グリーン購入ネットワーク(=GPN/東京・千代田)が主催する「第22回グリーン購入大賞」の表彰式が12月15日、都内で開催された。10の企業や自治体などが受賞。大賞・環境大臣賞は漂着海藻を活用して食品や医薬品などの原料を生産するキミカ(同・中央)、同・経済産業大臣賞は自動車部品のリサイクルに取り組むNGP日本自動車リサイクル事業協同組合(同・港)、同・農林水産大臣賞はパーム油のサステナブル調達を手がける不二製油グループ本社(大阪)が受賞。コロナ禍で消費活動が停滞する中、BtoBや中小企業等の再エネ電力調達の取り組みが目立った。(いからしひろき)

同賞は1998年に「グリーン購入」の普及・拡大に取り組む団体を表彰する制度として創設。第19回(2018年度)より、持続可能な調達を通じてSDGsの目標達成に寄与する取り組みも審査対象に加えた。22回目となる今年度は、10の企業や自治体、学校法人等が、部門賞、大賞、優秀賞等を受賞した。

大賞と環境大臣賞を受賞したキミカは、1941年の創業以来、浜に打ち上げられた“漂着海藻”を活用して、食品や医薬品などの原料となる「アルギン酸」を生産。1980年以降はチリを主産地とし、継続的かつ安定的な調達により地元漁民の生活を支え、海岸付近の砂漠で自然乾燥させることでエネルギー消費を大幅に削減している。さらに、アルギン酸を抽出した後の残渣は肥料として活用するなど、海のサーキュラーエコノミーとも言える資源循環型ビジネスモデルを80年に渡って実践していることが評価された。

大賞・環境大臣賞を受賞したキミカの笠原文善社長(左)と授与した環境省大臣官房審議官の白石隆夫氏
受賞スピーチを行う笠原社長

大賞と経済産業省を受賞したのはNGP日本自動車リサイクル事業協同組合。使用済み自動車を引き取り、まだ使える部品を「自動車リサイクル部品」として再利用するとともに、他の部品も半手作業で徹底分別し、資源循環と廃棄物削減に取り組んでいる。また、それによるCO2削減効果を定量的に示すことで商品に付加価値を与え、ユーザーの選択肢を増やしたことも評価の理由とされた。

大賞・経済産業省を受賞したNGP日本自動車リサイクル事業協同組合の小林信夫理事長(左)と授与した経済産業省産業技術環境局審議官の木原晋一氏
受賞スピーチを行う小林理事長

大賞と農林水産省を受賞した不二製油グループ本社は、主原料のサステナブル調達を通じ、サプライチェーン上の地球環境や人権の課題解決に取り組んでいる。特にパーム油に関しては、2016年に「森林破壊ゼロ、泥炭地開発ゼロ、搾取ゼロ」を掲げ、業界に先駆けて「グリーバンスメカニズム」(苦情処理・問題解決の仕組み)を構築。その結果、2019年度には1400に及ぶ搾油工場のトレーサビリティを達成した。

賞・農林水産省を受賞した不二製油グループ本社の酒井幹夫社長(左)と授与した農林水産省大臣官房審議官川合豊彦氏
受賞スピーチをする酒井社長

その他の大賞、優秀賞の受賞者は以下の通り。内藤鋼業(愛媛・内子町)のバイオマス発電プロジェクトや、二川工業製作所(兵庫・加古川市)のゼロ・カーボンチャレンジ、長野県立大学(長野・長野市)の国公立大で初の再エネ100%調達実現など、それまで大手企業が中心だった再エネ電力調達を、中小企業や地方自治体、大学法人が取り組み、成果を上げた例が目立った。

優秀賞(中小企業部門)を受賞した内藤鋼業の内藤昌典社長(左)
優秀賞を受賞した二川工業製作所の二川昌也社長(左)とGPN梅田靖会長
優秀賞(行政・民間団体部門)を受賞した長野県立大学の金田一真澄学長(左)

審査委員長で、グリーン購入ネットワーク会長の梅田靖氏(東京大学大学院教授)は記者の取材に、「再エネに加え、BtoBなどコロナ禍で比較的影響の少ない業種、取り組みの応募が多かった。経済活動が持ち直せば、消費系の企業や団体もより多く応募してくれるだろう」と来年度への抱負を語った。

【受賞一覧】※グリーン購入ネットワークHPより抜粋

■第22回グリーン購入大賞 審査結果
◇大賞・環境大臣賞
*株式会社キミカ(中小企業部門)
海のゴミを資源に。漂着海藻から「アルギン酸」を生み出し、サーキュラーエコノミーを80年間実践した企業

◇大賞・経済産業大臣賞
*NGP日本自動車リサイクル事業協同組合(行政・民間団体部門)
自動車リサイクル部品でカーボンニュートラルに貢献~削減効果の定量化と研究成果を活用した普及・啓発~

◇大賞・農林水産大臣賞
*不二製油グループ本社株式会社(大企業部門)
持続可能な食料システムに貢献する地球環境および人権に配慮したパーム油のサステナブル調達

◇大賞
*つくば市(行政・民間団体部門)
公共施設における「価格と環境」への影響を考慮した持続可能な電力調達
*住江織物株式会社(プラスチック資源循環特別部門)
水平循環型リサイクルタイルカーペットECOSシリーズ

◇優秀賞
*エスビー食品株式会社(大企業部門)
香辛料・パーム油・紙に関する「持続可能な原材料調達のコミットメント」の取り組み
*株式会社スーパーホテル(大企業部門)
~お客様と共に取り組む脱炭素実現への取り組み~公式 HP 予約による宿泊(エコ泊)の
カーボン・オフセット
*有限会社内藤鋼業(中小企業部門)
地域共生型バイオマス発電プロジェクトによる脱炭素社会への挑戦と地域活性化
*株式会社二川工業製作所(中小企業部門)
中小企業の製造業が取り組むゼロカーボンチャレンジ
*公立大学法人長野県立大学(行政・民間団体部門)
持続可能な社会へ「攻める」大学 ~水力発電電力による、国公立大学で初の再エネ 100%
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