東京五輪反対デモと民主主義の破壊者たち|和田政宗 ここ数年、全国各地で人々の分断を煽るような過激な行動を取る勢力が顕在化している。東京五輪の反対運動、沖縄の基地反対運動は、はたして本当に国民の「声」なのか。我々は、メディアが民主主義を破壊する活動に加担しようとしている事実をしっかりと認識しなくてはならない。

NHKによるとてつもないスクープ?

今年の正月三が日は、ご挨拶にうかがった他は年末に録りためた番組を見るなどして過ごしたが、新年早々、ある番組についてSNSで取り上げたところ、大きな反響を呼ぶこととなった。

その番組とは、去年12月26日に放送されたNHKのドキュメンタリー『BS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」』。6月公開予定の東京五輪公式記録映画の監督・河瀬直美さんによる五輪記録映画の撮影や制作の過程を密着取材した番組である。

この番組では、「五輪反対デモに参加しているという男性」にインタビューが行われ、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」と放送された。これが事実なら、東京五輪に対し、民意をゆがめようとする工作が何者かによって行われていたということであり、とてつもないスクープである。

この内容をSNSにアップしたところ、SNS上で私に対してのみならずNHKや河瀬監督に対し、「根拠がない」「デマ」「捏造」との一方的な指摘がなされた。「お金をもらって動員されていると打ち明けた」との部分を必死に打ち消そうとする指摘だ。

こうしたことから私はNHKに対し、これらの指摘に対する見解を問い合わせたが、回答はまだ来ていない。

人々の分断を煽るような過激な行動

私はNHK出身だが、アナウンサーとしてニュースを伝えるだけでなく、種々のドキュメンタリー番組のプロデューサーやディレクターとして番組制作にも携わってきた。その経験から述べるならば、最近のNHKの放送は切り取り型のものがあり信用できないものも散見されるが、今回は河瀬直美さんの映画監督としての名誉と信用がかかっており、NHKとして慎重に取材したものとみられる。

これも過去の経験から述べるならば、今回のように内容やコメントなどで踏み込む際は相当な裏付け取材をする。チーフプロデューサーやチーフディレクターから「本当にそうか?」「裏はしっかりとれているのか?」「その根拠は?」と相当詰められ、コメントやテロップに対しても「どこまで言えるのか?」「本当にそこまで言えるのか?」と、厳しく検討がなされる。しっかりとしたチームであれば、ジャーナリストとして揺るぎのない事実をもとに番組制作は行われる。

今回の「デマ」「捏造」との指摘に対してはNHKは根拠を示してはどうか。それですべて解決するし、もし事実が違っているなら、これはNHK会長のクビが飛ぶほどの案件となる。

この東京五輪の反対運動については、過激派が参加していたことが明らかになっており、警察官の身体をつかむなどして逮捕者も出ているが、ここ数年で全国各地で人々の分断を煽るような過激な行動を取る勢力が顕在化している。平穏な活動ではなく、力をもってでも自分たちとは異なる意見を阻止しようという行動である。

基地反対運動をしている人達からの暴行

その顕著な例が、昨年12月の武蔵野市の住民投票条例案における街頭演説会への妨害活動だ。JR吉祥寺駅前での演説会で条例案に対する反対演説を行おうとした私に対し、大音響のスピーカーや罵声などで声をかぶせ、演説を行えないよう妨害を行った。

これを神奈川新聞の石橋学編集委員が擁護し、毎日新聞の後藤由耶記者は脅迫的取材をしたうえ、一方的な報道を行ったが、こうした暴力的な活動を記者が擁護したり、記事で取り上げないというのは異様であり、あえて分断を生み出そうとしているように見える。

そして、同様の案件は沖縄の辺野古でも見られた。沖縄の基地反対運動にも過激派が入り込んでいることはすでに明らかになっているが、平成28年5月に辺野古で私が演説した際には、基地反対運動をしている人達から暴行を受けた。

私は、キャンプ・シュワブゲート前の違法テントへ向け、道を挟んで街頭演説を行った。道路用地を不法占拠しテントを張って活動をしている人達に対し、合法的な抗議活動をするよう訴えたもので、私は道路を挟んで距離を取って平穏に演説していた。

すると、私の演説を制止しようと違法テントから大勢の人達が出てきて、道路を渡って私を取り囲み、私を叩いたり小突いたり腕をひっかいたりした。また、私に随行していた2人はそれぞれ、プラカードの尖った部分で顔面を突かれ転倒したり、顔面に張り手をされ耳がしばらく聞こえなくなるという事態となった。

日本社会に対する破壊行為は許さない

このように、暴力によって反対意見を封殺する行動は絶対に許されないし、言論や政治活動による正々堂々とした活動を力で潰そうというのは民主主義を否定することである。

こうした動きが各地で顕在化してきたことはまさに恐ろしいことであり、力で政治活動を封殺する動きを神奈川新聞の石橋学氏のようにメディアが擁護するのは、言論や民主主義を否定する自殺行為でありメディアが許容していること自体が不思議でならない。

もし、あえて人々の分断を生み出すことを狙っているのであれば、まさにそれは日本社会に対する破壊行為である。

我々は、メディアが民主主義を破壊する活動に加担しようとしている事実をしっかりと認識しなくてはならない。そして、分断を生み出そうとする勢力に対し結束して闘い、日本社会を守っていかなくてはならない。私もこうした事実を広く明らかにし、皆様とともに闘っていきたい。

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和田政宗

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