何でもありのゴチャ混ぜ感!タワレコが今の視点で厳選した80年代コンピは必聴!  好評発売中! タワーレコード選曲のコンピレーションアルバム「Love 80's -TOP J-POP HEARTTHROBS」

時空を超えて世界中の人々を魅了する80年代の音楽

「1980年代っぽい曲」とひと口に言ってもそのジャンル、形式は様々で、これといった規則や型があるわけではない。それでも万人がふんわりと思い浮かべる “80'sっぽさ” という感じは確かにあって、今もなおこの時代の音楽は、時空を超えて世界中の人々を魅了し続けている。

今回は、そんな “80'sっぽさ” を過去最大級に味わうことができる至極のコンピレーション盤をご紹介しよう。『Love 80's -BEST J-POP』と銘打たれたこの作品は、文字どおり1980年代のJ-POPをテーマに、タワレコのバイヤーが厳選した選りすぐりの名曲を2枚組CD×2に収録したというもの。

「グルーヴ基準」にこだわり抜いたと標榜するように、曲目をチラ見するだけでクラクラしてしまうほど多種多彩な顔ぶれがズラリと並んでいる。江口寿史先生書き下ろしのジャケットもいい感じだ。

ここでは女性アーティストの比率高めの『Love 80's -TOP J-POP HEARTTHROBS』(以下『HEARTTHROBS』)についてレビューしたいと思う。

トップはRCサクセション、飯島真理、秋元薫、岡本舞子など通好みを配置

Disc.1のトップを飾るのはRCサクセション「雨あがりの夜空に」。説明不要のジャパニーズ・ロック・アンセムは、80'sを総括する上でも欠かせないマストナンバーだ。しかし本アルバムの真骨頂は、なんたってその多彩性にある。トラック2は「恋の呪文はスキトメキトキス」(伊藤さやか)。キヨシローからアニソンという、さすがの猿飛もびっくりの跳躍でリスナーの度肝を抜く。

また飯島真理の楽曲も3曲収録されているが、有名なマクロスではなく「まりン」「Blueberry Jam」「遥かな微笑み-黄土高原-」というチョイスに、タワレコバイヤーの変態チック(褒めてます!)なこだわりがうかがえる。いずれもアレンジャーは坂本龍一教授。「遥かな~」は教授のカヴァーでもある。ガールポップの旗手として再評価されているのも納得の佳曲ぞろいだ。

再評価といえば、あのNight Tempoが「シティポップのクラシック」と評し、リエディットした事でも話題を呼んだ秋元薫は「Dress Down」「我がままなハイヒール」の2曲で選出されている。今や邦楽80'sを語る上で外せないアーティストだといえよう。

また押さえておきたいのがアイドル勢では最多の3曲を送り込んだ岡本舞子の存在だ。当時は特段ヒットした歌手ではなかったが、可愛らしいルックスとはそぐわぬ都会的な洗練されたサウンドと確かな歌唱力は、知る人ぞ知る実力派として後世に評価が高まったタイプ。「桜吹雪クライマックス」という、まるで現代のアニソンのような語感にもいささか “早すぎた” 感が垣間見える。

洋楽ヒッツのカヴァー、歌うは長山洋子

1980年代といえば洋楽ヒッツのカヴァーが流行ったのも特徴。本アルバムでも数曲がセレクトされているが、マイケル・フォーチュナティ「ギヴ・ミー・アップ」、マドンナ「ラ・イスラ・ボニータ」を歌うのは共に長山洋子。

そう来るか! と思わずニヤリとさせられるほどクセの強い選曲だ。西武の東尾だってこんなクセ球投げないっての。先ほどタワレコバイヤーは変態だと書いたが、「ド変態」に訂正したいと思う(もちろん褒めてます!)。

異彩を放つビートたけし&たけし軍団

『HEARTTHROBS』で異彩を放つのが、Disc.1、Disc.2のそれぞれ中盤に配されたビートたけし&たけし軍団の存在だろう。「抱いた腰がチャッチャッチャッ」「哀しい気分でジョーク」は共に、当時シティポップを牽引していた若き天才・大沢誉志幸による大マジメな逸品。この手のオムニバスでは常連の「そして僕は途方に暮れる」ではなく、他者への提供曲をチョイスするあたりがニクイ。いかにも80'sっぽいシンセサウンドと、たけちゃんの泥臭い歌唱が混ざり合うと、なぜか泣きのナンバーに仕上がるという化学反応に唸らされる。

終盤に差しかかると、ますます(いい意味での)やりたい放題っぷりに拍車がかかる。なんせ伝説のティーンエイジャーバンド、コスミックインベンション「コズミック・サーフィン」なんてキワモノを出してきたかと思えば、そこから今度は岩崎宏美「聖母たちのララバイ」である。ファミコンで遊んでいたらオカンがいきなりチャンネル変えて『火サス』を見始めた的な、めちゃくちゃな展開。古今東西、どこのコンピレーション盤を引っ張り出してきてもこの2曲の並びはここでしか聴けないはずだ。

冒頭で「1980年代っぽい曲とひと口にいっても規則や型があるわけではない」と書いたが、もしかするとこの何でもありのゴチャ混ぜ感こそが “80'sっぽさ” の正体なのではないだろうか。まるでオモチャ箱のように、何が飛び出して来るのか分からないワクワク感がテレビ、音楽をはじめとしたエンタメ界全体にあふれていた時代。はっきり言って統一感なんかあったもんじゃないが、それこそが80'sの奥深さであり面白みなのだという事を、このコンピは軽薄に、しかし雄弁に教えてくれる。

Disc.2のラストを飾るのは、アンニュイな空気漂う名ナンバー「夕闇をひとり」。ただしユーミンの方ではなく、宮崎美子が歌った方。だからクセが強いっつーの!

カタリベ: 広瀬いくと

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