アニメは1部から3部がおススメ「ジョジョの奇妙な冒険」で洋楽を聴こう!  1986年12月2日 週刊少年ジャンプで荒木飛呂彦原作「ジョジョの奇妙な冒険」が連載開始

荒木飛呂彦が描くジョースター家とディオの戦い「ジョジョの奇妙な冒険」

今や、ウルトラマンや仮面ライダーの劇場版を親子で観に行くのは当たり前。場合によっては孫とヒーローについて語り合うなんて時代である。そして、私の場合、行きつけの飲み屋で若い店員さんとの共通の話題はアニメだったりする。

そんなとき彼らは、『ジョジョの奇妙な冒険』という漫画を話題にしてくることが多い。

平成生まれと「ジョジョ立ち対決」をする “昭和40年男”―― 人体構造を全く無視した激しくカッコ良い決めポーズを肴にしながらバカ騒ぎをしている姿はかなり「痛~ッ」であるが、それが私の世代を超えたコミュニケーション術であるのだから仕方がない。そして、イイ感じで酔いはじめると、私は「はじめの一歩とジョジョは、君たちが生まれる前からリアルタイムで読んでる」と必ずと言っていいほど自慢する。

ジョジョは『週刊少年ジャンプ』1987年1月1日号から連載開始。これまでいくつものシリーズを生み出し、第1部では、古城、墓地、ゾンビ、吸血鬼といったゴシックホラーに見られるような怪奇趣味とサスペンスフルなストーリーで人気を博した。

主人公は、名門貴族ジョースター家の跡取り息子・ジョナサン(通称ジョジョ)。そして、もう一人… 貧民街で育ち、父親の死をきっかけにジョースター家に引き取られた悪魔のような少年・ディオ。相容れることができない、ジョナサンの騎士道精神とディオの止まることを知らない悪への渇望。生まれも育ちも違うこの二人の若者は、反目し合うようになる。

そして、この物語の最も重要なピースがもう一つ、古代アステカ文明が生み出した謎の石仮面である。実はこの仮面には永遠の命を生み出す力が隠されている。長い歳月を経て仮面は骨董品としてジョースター家に取り置かれていた。

そんな折、遺産を奪うため当主であるジョナサンの父・ジョージを毒殺しようと企むディオだが、計画がバレてしまい逆にジョナサンに追い詰められる。逃げ場を失うディオ。しかし、彼は自らこの石仮面を被ることにより、永遠の命を持つ吸血鬼となって窮地から脱出する――

こうして、一世紀以上にわたるジョースター家と吸血鬼・ディオとの壮大な戦いの歴史の幕が上がるのだ。

登場人物たちとロックが混じり合うのも魅力

さて、もうお気付きの方もいるかもしれない。ディオ… 実にいい名前だ。悪の名前にピッタリではないか。デビルホーンズ(悪魔の角)を世界中のメタラー、ロックファンにバラ撒いたロニー・ジェームス・ディオと同じ名前だ。

ジョジョ… こちらもなかなかクールな名前だ。ビートルズの「ゲット・バック」の歌詞にあるあの「JOJO」だ。ちなみにジョジョの父親の名前はジョージ、当然ジョージ・ハリスンから頂いたものだろう。

この作品には、ジョジョ、ディオに始まり、スピードワゴン、リサリサ、サンタナ、スティーリー・ダンといったキャラクターが登場する。そのネーミングからもわかるように、ロックスターの名前や楽曲などから登場人物の性格や能力をイメージして、各キャラクターに名前を付けている訳だ。気に入ったキャラを見つけたら、同じ名前のアーティストの曲を探してみるのもちょっとした楽しみである。

当初、第1部においてゴシック趣味だった登場人物たちのファッションは、シリーズが続くにつれ、まるでロックの歴史をたどるかのように煌びやかなグラムロックやニューロマ風へと変遷していった。この刺激的なヴィジュアルセンスがたまらなく楽しい―― また、画中に書き込まれる「ズキューン」といった独特なオノマトペ(擬音)はヘヴィメタルのギタープレイからイメージされたものだ。

イエス、バングルス、パット・メセニー… アニメにも洋楽を起用

この作品、過去に何度かアニメ化されているのだが、おススメなのは2012年から2015年の間に放送された第1部「ファントムブラッド」から第3部「スターダストクルセイダース」を原作としたシリーズ。

原作者・荒木飛呂彦氏の筆致や空気をそのままアニメに落とし込んでいるので私たちの年代が観ても存分に楽しめる内容。しかも毎回、エンディングテーマに1970~1980年代の洋楽を差し込んでくるあたり、もう拍手喝采なのである。

例えば、古代アステカ文明の不気味な壁画を背景に流れるイエスの「ラウンドアバウト」。運命を示唆するタロットカードと登場人物たちの美しい決めポーズ(ジョジョ立ち)には、バングルスの「エジプシャン(Walk Like An Egyptian)」。

宿敵・ディオが待ち受けるエジプトへと向かう主人公たちと旅情あふれるエキゾチックな風景にはパット・メセニー・グループの「ラスト・トレイン・ホーム」と言った具合。

こうした作り手たちのリスペクトによって、埃にまみれていた楽曲に陽が当たり、若い世代に自分たちが聴いてきた音楽が再評価されることは素直に嬉しい。そして私は「ジョジョ立ち」をキメながら今夜も一杯やっている―― え! このポーズ、ジョジョ立ちじゃないって? さすが、わかってらっしゃる。

♪ウォーク、ライク、アン、エジプシャ~ン

※2016年1月8日、2018年6月7日に掲載された記事をアップデート

カタリベ: 鎌倉屋 武士

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