デス・スターに似た土星の衛星「ミマス」氷の下に内部海が存在する?

【▲ 土星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星ミマス(Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute)】

こちらは土星探査機「Cassini(カッシーニ)」が撮影した土星の衛星「ミマス」です。ひときわ目を引く大きなクレーターは、直径130kmの「ハーシェル」クレーター。ミマスの直径が396kmですから、ハーシェル・クレーターはその3分の1ものサイズがあることになります。

巨大なクレーターを持つミマスの姿は映画「スター・ウォーズ」シリーズに登場する宇宙要塞「デス・スター」を彷彿とさせるもので、画像を公開したアメリカ航空宇宙局(NASA)も解説文でデス・スターに触れているほどです。そんなミマスに氷の外殻に覆われた内部海が存在する可能性を示した研究成果が、サウスウエスト研究所(SwRI)のAlyssa Rhodenさんと惑星科学研究所(PSI)のMatthew Walkerさんによって発表されました。

発表によると、土星とその衛星を2017年9月まで探査していたカッシーニは、ミッションの終盤にミマスの秤動(周期的な振動運動)を検出していたといいます。Rhodenさんたちは、秤動から推測されるミマスの内部構造とミマスの内部を温める潮汐加熱(※)の関係性を調べるために、潮汐加熱モデルを使って分析を行いました。その結果、ミマスの表面から24~31km下に内部海が存在する可能性が示されたといいます。

※…別の天体の重力がもたらす潮汐力によって天体の内部が変形し、加熱される現象のこと。

【▲ 土星探査機カッシーニが撮影した土星の衛星エンケラドゥス(Credit: NASA/JPL/Space Science Institute)】

潮汐加熱によって氷衛星の内部に広大な海が存在する可能性は、ミマスと同じ土星の衛星であるエンケラドゥスをはじめ、木星の衛星エウロパや海王星の衛星トリトンなどで指摘されています。これらの衛星は外殻から間欠泉(プルーム)が噴出するなど活動が盛んで、衛星の表面は地質学的に短いタイムスケールで更新されていると考えられています。

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ミマスにも内部海が存在する可能性は以前から指摘されていましたが、その表面にはハーシェルをはじめ数多くのクレーターが残っており、地質学的には不活発だと思われていたといいます。ミマスが不活発で凍りついた天体であることを証明しようとしたものの、その代わりに内部海が存在する証拠を得ることになったというRhodenさんは「私たちはミマスの表面にだまされていたのです」と語ります。

今回の成果は、様々な天体における生命の居住可能性についての理解をさらに深めることになるかもしれません。地球は太陽のハビタブルゾーン(地球のような岩石惑星の表面に液体の水が存在可能な領域)を公転しており、これまでに5000個近くが見つかっている太陽系外惑星を対象とした地球外生命探査でも、主星のハビタブルゾーンを公転しているとみられる惑星が注目されています。

そのいっぽう、近年ではハビタブルゾーンの外にあるエウロパやエンケラドゥスのような氷衛星に内部海が存在する可能性が浮上しています。また、恒星を公転していない自由浮遊惑星(浮遊惑星、はぐれ惑星)やその衛星であっても、放射性元素の崩壊熱や潮汐加熱によって表面に液体の水が存在する可能性があるといい、生命が居住できるかもしれない天体の範囲は広がり続けています。

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Rhodenさんは「もしもミマスに海があるのなら、それは表面的には海の存在を示さない、新しいタイプの小さな『隠れた』海洋天体が存在することを意味します」「私たちの新たな理解は、潜在的に居住可能な天体の定義を太陽系の内外において大幅に広げることになりました」とコメントしています。

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Image Credit: NASA/JPL-Caltech/Space Science Institute
Source: サウスウエスト研究所
文/松村武宏

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