奄美の森は最終形態!?森が苔からできて「陰樹の森」になるまで

奄美大島の自然と言われてまず思い浮かぶのは青く輝く海かもしれません。
ですが、その海の豊かな生態系は森の豊かさと緊密に関係していると知っていましたか?

奄美大島には豊かな森が広がります。
鳥たちの美しい鳴き声、葉っぱが風に揺れる音、ゆったりと漂ってくる花の甘い香りや草のにおい、時々見かけるイノシシの足跡…。
ウラジロガシのでっかいドングリを探しながら歩いたり、土の柔らかさや岩の固さを足の裏で感じながら散策すると、新鮮な森の息吹を胸いっぱいに感じられます。

奄美の森の多くは、長い長い時間をかけて現在の形になり、森の「最終形態」とも呼べる「陰樹の森」となっています。

そんな身近にあるけれど意外と知らない奄美の森の、成長の過程や植生についてご紹介させてください。

そもそも森の成り立ちって?

そもそも森は、どうやって誕生するのでしょう?

森は、最初から木々が生い茂った状態だったわけではありません。
森は苔から始まります。
苔が地表に水分を蓄えることで、他の植物が育つ環境がはじめてできあがるんです。

次第に草や木が繁殖し、木が生い茂って最初にできる森が「陽樹(ようじゅ)の森」。
ここでは日当たりのよい環境で育つ植物や樹木が育ち、背の低い木だけでなく高い木も生い茂るようになります。

たくさんの木々が茂ると、葉っぱにさえぎられて森の地表に太陽の光が届きにくくなってきます。
そうすると太陽の光をたくさん必要とする「陽樹」が発芽しても、あまり育たなくなりますよね。

すると今度は、成長するときにあまり光を必要としない「陰樹(いんじゅ)」と呼ばれる種類の木々が育つようになります。
「陽樹」が多かった森は次第に、陽樹と陰樹が混ざった「混交林」になり、そして最後には陰樹が主体となった「陰樹の森」に変化していくのです。

陰樹の森は、森の最も成熟した形態なんです。

奄美の森はほとんどが「陰樹の森」!

奄美大島には多くの豊かな森が残されています。

奄美の森の多くは「陰樹の森」。
深い森の中に入ってみると、たしかに森の外側から見えていた植物と森の中で育っている植物は、種類が違っているのを感じることができます。

例えばススキ。
ススキは集落でも森の外側でもよく見かける植物ですが、陰樹の森では入口付近で見かけることはあるものの、森に入ってたった数分歩くだけで、不思議なほど見かけなくなります。

反対に、集落など開けた場所ではほとんど見かけない「シマオオタニワタリ」(上の写真の左手手前の木の幹から生えているように見える植物)などの植物を森の中で見ることができます。

「奄美大島で有名な木といえば?」、と言われて思い浮かぶ人も多いであろう「ヒカゲヘゴ」。
この植物は実は「陽樹」なので、切り開かれた土地でないと大きく成長できないんです。

ヒカゲヘゴは金作原原生林の中にあるというイメージが強い人も多いと思います。
それなのに、奄美の陰樹の森の中では十分に成長できないなんて、なんだか意外だと感じてしまいませんか?

今やたくさんの希少な植物や動物のすみかとなっている奄美の豊かな森。
そんな大きな森も、ちっぽけな苔から生まれたなんて…。

一体この景色になるまで、何百年、何千年もの間、森は成長し続けてきたんだろう。
そう思うと、人間の一生なんてとっても短いもののように感じてしまいます。

島の生態系を育んで守り、そしてこれからも豊かな環境を提供してくれる奄美の「陰樹の森」。
森をよく知るガイドさんと一緒に、自然を散策してみるのも、島を知るいい機会になりますよ。

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