朝鮮の自衛力強化は「瀬戸際戦術」ではない わが国家第一主義時代の国防力発展計画

朝鮮で地対地中長距離弾道ミサイル「火星12」型の検収射撃試験(1月30日)が行われると「火星12」が発射されたのは2017年以来5年ぶりだとして、その「発射意図」に関する恣意的な解釈と「緊張再燃」に関する主張が広まった。

朝鮮問題で過去と現在を単純比較することは誤判の原因となる。今日の朝鮮は5年前より高い視点から世界を俯瞰し、過去とは異なる新たな段階の国家復興計画を推進している。

地対地中長距離弾道ミサイル「火星12」型の検収射撃試験が行われた(朝鮮中央通信=朝鮮通信)

5年間に起きた変化

 朝鮮中央通信によると、「火星12」型に対して実施された検収射撃試験は、「生産装備されている地対地中長距離弾道ミサイル『火星12』を選択的に検閲し、兵器システムの全般的な正確性を検証する目的で行われた」という。つまり、2017年に試射が行われたミサイルはすでに戦力配備されているということだ。

その年、朝鮮では米本土を射程内に収める大陸間弾道ミサイル「火星15」型の試射成功により国家核武力の完成が宣言され、現在は朝鮮労働党第8回大会(2021年1月)で示された国防力発展5ヶ年計画が進められている。今年1月には、同計画の「戦略兵器部門最優先5大課題」の中で最も重要な極超音速ミサイルの研究開発事業が完了した。

朝鮮は核戦争抑制力を備えた後も時間を浪費することなく国防力を強化してきた。

一方、朝鮮の国家核武力完成を基点として、朝鮮半島をめぐる国際政治の構図とパワーバランスが大きく変化した。

それまで米国主導の対朝鮮制裁に加担していた中国とロシアは、隣国である朝鮮との善隣友好関係を強化発展させることに外交の焦点を合わせるようになった。朝鮮の力の実体が中露の国益に合致する構図が形成されたためだ。

実際に「新冷戦」構図が深まり、米国との強権と横暴が国際平和と安定の根幹を揺るがしている現在の情勢下で、米国と対峙する朝鮮-中国-ロシアの共同戦線が形勢されつつある。

  戦略国家の地位に相応した計画

 時代は変わり、朝鮮の国際的地位も向上した。そして朝鮮労働党は戦略国家の地位と国力に相応した活動計画を作成、実行している。

党第8回大会で、わが国家第一主義の時代、すなわち「国家の尊厳と地位を高めるための決死の闘い結果として生まれた自尊と繁栄の新時代」(金正恩総書記の党大会報告)を表明した朝鮮は、党大会が開かれた2021年を起点として今後15年ほどですべての人民が幸せを享受する繁栄した社会主義強国を建設するという構想を明らかにしている。

段階と局面が変わったことを朝鮮のリーダーは明確に述べていた。

いかなる国も、朝鮮を相手にするには「自尊と繁栄の時代」を切り開いた党と政府と人民の気概と志向を前提とする必要がある。

労働党が提唱している「わが国家第一主義」の本質は、「歴史の荒波の中でもチュチェ(主体)の路線を変更せず前進してきた祖国に対する誇りと自信、そのような祖国の全体的な国力をさらに向上させようとする強烈な意志」(労働新聞)である。ここで述べている国力は、自らの尊厳と自主的な権利を守ることができる力であり、国防力もまさにそのような力だ。

歴史的に外国勢力の侵略による受難を幾度も経験し、現在も米国を筆頭にする敵対勢力の軍事的威嚇と制裁の中で社会主義を建設している朝鮮にとって、国防力強化は一時も中断してはならない必須で死活的な重大国事となっている。社会主義強国建設の15年構想と国防力強化計画は不可分の関係にある。

わが国家第一主義の時代、朝鮮労働党は戦略国家の地位と国力に相応した活動計画を作成、実行している(「偉大な党の領導に導かれわが国家第一主義時代を輝かせていこうう」と訴えるポスター、朝鮮中央通信=朝鮮通信)

 主権行使に対する妨害と攻撃

 朝鮮は特定のある国家、勢力ではなく戦争そのものを主敵と定め、既存の戦争抑制力を質量的に強化し、国家安全のための戦略戦術兵器の開発生産を加速化させている。

これには、「われわれは後世のためにも強くなければならない、まずは強くなってみなければならない」(2021年10月、国防発展展覧会における金正恩総書記の記念演説)という観点と立場が貫かれている。

朝鮮のリーダーはこれまでの経験から、強力な自衛力がなければ党と政府の内外政策を成功裏に進めることができないことを誰よりもよく知っている。

そして朝鮮の国力を信じ、その力に基づいて社会主義強国を建設しようとしている。

戦略国家の地位にふさわしい戦略戦術兵器システムの開発生産もその一環であるが、国防力強化は元来、主権国家の合法的権利だ。いかなる国も朝鮮で行われるミサイルの試射や検収射撃試験を非難せず、朝鮮の主権行使を妨害しなければ、朝鮮半島の緊張が誘発されることはない。

朝鮮の敵対勢力は、朝鮮の国防力強化措置に「瀬戸際戦術」という古びたレッテルを貼り国際世論をミスリードするのではなく、相手の力の実体を直視すべき局面に立たされている。

「火星12」型の検収射撃試験が行われた現実が示すように、朝鮮の姿は5年前と異なる。

過去の反復はない。わが国家第一主義時代の内外政策は、より強大になった力によって担保されながら、過去とは異なる軌道に沿って進められている。

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