連星では死にゆく恒星の活動が新たな惑星の誕生を促しているかもしれない

【▲ 死につつある星を含む連星と、連星を取り囲む円盤を示した図。円盤内側の空洞は、新たに形成された惑星によって生じた可能性があるという(Credit: KU Leuven / N. Stecki)】

地球をはじめとした太陽系の惑星は、約46億年前に太陽が誕生してからさほど間を置かずに形成されたと考えられています。しかし、この広い宇宙には、恒星の誕生とともに形成されたものではない惑星が存在するかもしれません。

ルーヴェン・カトリック大学(KU Leuven)の天文学者Jacques Kluskaさんを筆頭とする研究グループは、恒星としての寿命を終えて死につつある星を含む連星において、ガスや塵でできた円盤から惑星が形成される可能性を示した研究成果を発表しました。円盤を構成するガスや塵は、死につつある星から放出されたものです。つまり、連星の一部には死にゆく恒星の活動によって生み出された惑星が存在するかもしれないというのです。

■連星が持つ円盤の一部には惑星の存在を意味するかもしれない空洞がある

太陽のように比較的軽い恒星(質量が太陽の8倍以下)は、その晩年に大きく膨張した赤色巨星へと進化します。膨張した恒星は外層から周囲の宇宙空間へとガスや塵を放出し、燃え残った熱い中心核は白色矮星になると考えられています。

研究グループによると、白色矮星に進化しつつある恒星が別の星と連星を成している場合、放出された物質でできた円盤が連星の周囲に形成されますが、この円盤は誕生したばかりの星を取り囲む原始惑星系円盤にとても似ているといいます。原始惑星系円盤は、塵やガスから惑星が形成されると考えられている場所です。

今回、研究グループは過去の観測によって得られたデータをもとに、恒星としての寿命を終えつつある星を含む、進化した連星(※)85個を調べました。その結果、これらの連星のうち10個が持つ円盤に空洞が生じていることが明らかになったといいます。Kluskaさんは「これは、周辺の物質をすべて集めた何かが空洞を浮遊していることを示しています」と語ります。

※…ポストAGB連星(post-AGB binary)、研究グループは漸近巨星分枝(AGB)の段階か赤色巨星分枝(RGB)の段階を経た星を含む可能性がある進化した連星と定義

研究グループは、この空洞が円盤から新たに形成された巨大な惑星によって生じた可能性を指摘しています。Kluskaさんによると、円盤に空洞がある連星の場合、死につつある星の表面では鉄などの重元素(水素やヘリウムよりも重い元素)が乏しいといいます。これは、惑星によって円盤の内側部分に空洞が生じた結果、円盤の外側部分に塵が閉じ込められたことと関係している可能性が考えられるといいます。

死にゆく恒星から宇宙空間に放出されたガスや塵は、やがてどこかで誕生するであろう新たな恒星や惑星の材料になると考えられています。地球もその意味ではかつてどこかに存在していた恒星が寿命を迎えたことで形成されたと言えますが、今回の研究では死につつある恒星から放出された物質をもとに、その星が属する星系において新たな世代の惑星が形成される可能性が示されたことになります。

もしも進化した連星の周囲で実際に惑星が発見され、その惑星が恒星の誕生とともに形成された「第1世代」ではなく、恒星の死とともに形成された「第2世代」だと確認されれば、惑星の形成に関する人類の知識がさらに深まることは間違いありません。研究グループは今回の成果を検証するために、円盤に空洞がある10個の連星をヨーロッパ南天天文台(ESO)の望遠鏡を使って観測する予定です。

研究に参加したルーヴェン・カトリック大学天文学研究所所長のHans Van Winckel教授は「この並外れた惑星形成の仮説に対する確認と反論は、現在の惑星形成理論についての前例のないテストになるでしょう」とコメントしています。

関連:2012年に見つかった太陽系外惑星、恒星ではなく白色矮星を公転している?

Source

  • KU Leuven \- Even dying stars can still give birth to planets
  • Kluska et al. \- A population of transition disks around evolved stars: Fingerprints of planets

文/松村武宏

© 株式会社sorae