九州・沖縄県紙交換企画【SDGsの姿 2022】ー6ー 社会に支援の輪広げるNPO法人「地球市民の会」(佐賀市)

世界見据え人材育成

写真説明/持続可能なまちづくりについて研究発表した生徒たちと語り合う地球市民の会事務局長の岩永清邦さん(右)=佐賀市の龍谷高

 39年前から佐賀市を拠点に、SDGsの取り組みが世界中に広がることを予測するかのように活動を続けてきた団体がある。認定NPO法人「地球市民の会」。岩永清邦さん(38)は事務局長として8人のスタッフとともに奔走している。

 会を創設したのは、国際交流や支援活動に情熱を注ぎ、2008年に57歳の若さで亡くなった古賀武夫さん。古賀さんは広い視野でさまざまな支援に取り組んだ。貧しさから教育を受けられないタイの子どもたちには奨学金を贈った。その数、30年間で3451人。ミャンマーでは農業技術などを伝え、住民の自立を応援した。

 青年海外協力隊員として中国で活動した岩永さんが入会したのは、偉大なリーダーを失った直後の09年。海外支援に加え、国内の課題を見つめ直し始めた時だった。岩永さんらは過疎に悩む佐賀市の中山間地で空き家を改修し、休耕田で伝統的な和綿を栽培。「人口増は難しくても、人を呼び、住民が活躍できる場をつくりたかった」。同様に過疎に悩む韓国から大学生を招き、交流しながら解決策を語り合った。

 近年はSDGsを県内に広める活動に力を注いでいる。「『他の人の幸せを自分の幸せと感じられる社会をつくる』という会の理念につながっている」と岩永さん。当事者意識を持って行動する人を増やしたいと、小中高校でSDGsの意義を伝える講演やワークショップを担っている。

 岩永さんは、創設者の古賀さんについて「経済発展の一方で生まれるひずみや課題を肌で感じ、時代の先を見据えて動かれていたのでしょう」と語る。

 「SDGsの旗の下で手を取り合う人が増えれば、世界は変わる」。“地球市民”の輪の広がりに期待を込めた。
(佐賀新聞・北島郁男)

 【メモ】地球市民の会のスタッフはミャンマー駐在員を含め9人。会員423人で、100人以上のボランティアも活動を支える。国際協力、国際交流をはじめ、災害時の支援や子どもの居場所づくりにも取り組んでいる。

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