練習中に流行曲や「もぐもぐタイム」 女子小学生チームが目指す“野球のイメチェン”

県内初の小学生女子チーム「静岡フューチャーズ」の花村博文監督【写真:間淳】

創部4年目、静岡県で初の女子児童だけのチーム「静岡フューチャーズ」

音楽をかけながらの練習や、おやつを食べる「もぐもぐタイム」。静岡市で活動する県内初の女子小学生野球チーム「静岡フューチャーズ」には、ユニークな特徴がある。一見、野球とは関係がなさそうだが、女子野球の未来を考えた監督の工夫や狙いが詰まっていた。

【動画】女子たち楽しそう! 静岡フューチャーズが練習内に取り入れる「もぐもぐタイム」

週末の午前。静岡市を流れる安倍川の河川敷では、流行りの曲が響いている。音楽が流れているスピーカーの近くからは、少女たちが口ずさむ歌詞や笑い声が聞こえてくる。「静岡フューチャーズ」の練習には、いつも楽しさや明るさが満ちている。

創部4年目の「静岡フューチャーズ」には、小学1年生から6年生まで13選手が所属している。静岡県で初めてつくられた女子だけの小学生野球チームだ。ほとんどの選手が初心者だからこそ、花村博文監督は練習に工夫を凝らしている。

音楽をかけるのも、その1つ。ウォーミングアップでは「YOASOBI」や「NiziU」など、流行りのアーティストの曲を流す。プロ野球の球場で見られるような光景に、花村監督は「明るく楽しく練習してもらうことを第一に考えています。野球未経験の小学1、2年生に技術や知識を厳しく教えたら、野球が嫌いになってしまいます。笑っていてほしい。泣く子は出したくないんです」とチーム方針を語る。

「リズムトレーニング」を行う選手たち【写真:間淳】

監督は「リズムトレーニング」の資格を取得、選曲にも狙いがある

ただ、花村監督は小学生の女子児童が好きそうな曲を何となく選んでいるわけではない。ジャンプしたり、体をひねったりする選手に必ず「リズムに合わせて」と指示を出す。これは、最近様々な競技で取り入れられている「リズムトレーニング」。リズム感を高めることで運動能力を向上させるトレーニングで、花村監督は講習を受けて資格を取った。リズムトレーニング以外でも音楽をかけながら練習するのは「厳しくて重い雰囲気のある野球のイメージを変えたくて。気分が明るくなるかなと思っています」と意図を説明する。

チーム練習は土日の週2回で、午前8時から4時間。丸一日練習する少年野球チームも多いことを考えると半日は短いかもしれないが、小学生が集中力を維持するのは難しい。そこで、花村監督は「もぐもぐタイム」を取り入れている。打撃練習や守備練習などメニューを終えると吸水を兼ねた休憩を取り、おやつを食べてもいい時間にしている。選手たちは遠足気分でおやつを持参。花村監督が、選手で分けられるようにファミリーパックのおやつを準備する時もある。

「まだバットやグラブを扱うのが難しい中で4時間練習するのは、大人が思っている以上に大変なはずです。このチームをつくった目的は野球が好きな子どもを増やすことなので、練習に来てもらうのが一番大切です」。野球を通じて仲良くなったチームメートとおやつを食べる楽しみがあるから、土日に早起きしてグラウンドに行く。それをきっかけに、野球への興味を抱く子どももいる。

「本気で野球の技術を磨きたいのであれば、女子でも少年野球チームに入る選択肢があります。うちのチームは野球に触れる機会をつくる、野球に関心を持つ女子を増やすのが目的なので、初心者は大歓迎です」と花村監督。もちろん、挨拶や礼儀、野球の基本は選手に指導している。だが、チームを象徴する「明るく楽しく」を何よりも大切にしている。(間淳 / Jun Aida)

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