拙守に加えエンドランもバントも失敗…虎の弱点露呈にOB「この時期で良かった」

阪神・矢野燿大監督【写真:荒川祐史】

「言わなくてもわかっているだろう、という考えが一番の悪」

阪神は昨季、ヤクルトにゲーム差なし、勝率わずか5厘差で優勝を逸した。今季こそ17年ぶりのリーグ制覇を確実に果たしたいところだが、沖縄・宜野座キャンプ中の16日に行われたケース打撃では、攻守にミスが続出した。凡事徹底こそ栄冠への近道。現役時代に阪神、ヤクルトなど4球団で21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏が分析した。

「ひとことで言えば、この時期でよかった。ケース打撃でミスをする分にはその後練習して、本番では『できる』という態勢を取れますから」。野口氏はOBの1人として複雑な表情を浮かべた。

投手が4年目の湯浅、捕手が坂本、無死一、三塁で打者が木浪という場面では、カウント2-2からボテボテの当たりの投ゴロ。捕球した湯浅は咄嗟に本塁へ送球したが、三塁走者のマルテはそこまで飛び出していなかった。坂本が三塁へ転送するも、走者3人がオールセーフとなった。

「ああいう場面では、捕手が投手に対して、こういう打球が飛んだらこうするんだぞと逐一確認しておかないといけない。投ゴロなら、まず三塁走者をチェックし、セカンドは間に合うのか、ファーストで1つアウトを取るのか、といったことです」と野口氏は話す。

「言わなくてもわかっているだろう、という考えが一番の悪です。わかっているよ、うるせえなと言われるくらい確認しておかなければならない。僕には、そういう確認作業を怠ったことが招いたミスに見えました」と指摘。「Eのランプは点灯しないし、失策数にはカウントされないけれど、非常に痛いプレーです」と警鐘を鳴らした。ただでさえ、阪神は失策数が2018年以降4年連続12球団ワーストで、昨季も86に上った現実がある。

集合して確認を行う阪神ナイン【写真:荒川祐史】

「ミスが出た時点でプレーを止め、1つ1つ解決した方がいい」

投手が同じく湯浅、無死一塁、打者が江越の場面では、初球にヒットエンドランのサインが出たものの空振り(一塁走者・大山はセーフ)。走者を一塁へ戻し、ボールを1球挟んで、再びエンドランを命じられたが、再生画面を見ているかのような空振り(大山は二塁タッチアウト)に終わった。江越は打席の途中にも関わらず召し上げられ、次打者が打席に入った。

最後の場面も痛恨だった。無死一、二塁の想定で島田が送りバントを命じられたが、3球連続でバックネット方向へのファウルとなり、3バント失敗だ。野口氏は「阪神は盗塁が多いチーム(昨季は12球団最多の114盗塁)ですが、リスクが高い攻撃です。優勝がかかったシーズン終盤ともなれば、送りバントで進めるケースも出てくる。そういう時に困らないための練習ですから、現時点では非常に不安です」とため息を漏らした。

ミスが目立ったケース打撃が全て終了した後、コーチ陣が選手を集めて反省を促していたが、野口氏は「ミスが出た時点でプレーを止めて、その都度1つ1つ解決していった方がいいのではないか」と提言する。

阪神は昨季、77勝56敗10分(勝率.579)で、73勝52敗18分(同.584)で優勝したヤクルトを白星では4つも上回った。それでも優勝できない原因は、こうした細かいプレーにあるのかもしれない。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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