ブレーク兆しの若手が“開幕した途端サッパリ”を防ぐには? 専門家が指摘する練習量

中日・高橋宏斗、巨人・秋広優人、楽天・安田悠馬(左から)【写真:荒川祐史】

若手が開幕後も活躍するには? 野口寿浩氏が解説「どれだけ練習量を確保するか」

3月25日のセ・パ同時開幕へ向けて練習試合が進む中、今年もブレークの兆しを見せている若手、1年目から活躍しそうなルーキーたちがいる。ただ、こうした選手が“開幕した途端サッパリ”となるケースも毎年数多い。なぜこういった現象は起こるのか。勢いをキープする方法はあるのだろうか。

フレッシュな新顔を見るのは楽しい。楽天のドラフト2位・安田悠馬捕手(愛知大)は、17日のヤクルトとの練習試合で“プロ初本塁打”を放つと、19日の阪神戦では4番に座り、秋山、藤浪から先制タイムリーを含む2打席連続中前打。入団会見で「エンジゴジラと呼んでほしい」とアピールした明るいキャラも“売り”だ。

ロッテのドラフト1位・松川虎生捕手(市和歌山高)は好守に高卒新人とは思えない落ち着きぶりで、1軍でも全く見劣りしない。中日のドラフト2位・鵜飼航丞外野手(駒大)も長打力をアピール。巨人では2年目の中山礼都内野手、秋広優人内野手が存在感を示している。投手では、ドラフト1位入団から2年目を迎えた中日・高橋宏斗投手が19日のDeNA戦に先発し3回2安打無失点。西武ではドラフト1位・隅田知一郎投手(西日本工大)、同2位・佐藤隼輔投手(筑波大)の両左腕がシート打撃、紅白戦で好投し、練習試合での対外試合デビューが待ち遠しい状態だ。

もっとも、今の勢いのまま公式戦開幕後も突っ走れるケースは、むしろ少ない。昨年は楽天3年目の辰己涼介外野手がオープン戦で12球団2位の打率.385と猛打を振るい、開幕戦でも初回先頭打者初球本塁打を放ったが、その後打率は降下。最終的には.225だった。もっとも、抜群の守備力でセンターのレギュラーの座は確保し、初のゴールデングラブ賞を獲得。今年は改めて打撃でも成長を見せつつある。

「キャンプで蓄えた体力の“貯金”はGW明けには尽きる」

練習試合やオープン戦では、好調の若手に対して相手投手が甘いコースや得意の球種で“エサ”をまき、開幕した途端ガラリと攻め方を変えるケースがある。投手にしても、相手からすぐに研究される。開幕後に調子を落とす若手が多い理由は他にもある。

現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で計21年間捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「開幕1軍や開幕スタメンを達成した時点で、達成感や安堵感で心構えが変わってしまう選手が結構多い。それも人情ですが、あくまでプロの勝負はそこからです」と警鐘を鳴らす。

また、「私の経験から言って、キャンプで蓄えた体力の“貯金”は長く見積もっても、ゴールデンウイーク明けには尽きる。新人や若手はそこからがきつくなる」と指摘。「開幕後も試合出場と並行してトレーニングを継続することが大事になります。特に梅雨の時期は試合が中止になることも多いので、たとえ雨の中でも、体が濡れない服装をした上で走り込みを行うといいと思います」と提言する。

「公式戦ではもちろん結果が第一ですが、どれだけバランスを取って練習量を確保するかが、トータルでポイントになると思う」と強調する野口氏。練習試合、オープン戦を突き抜け、開幕後も大きな爪痕を残すような若手が、今年は何人現れるだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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