参院選2022でネット投票は実現するのか?システム導入・在外投票・実現に向けた課題は……選挙ドットコムちゃんねるまとめ

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2022年2月24日に公開された動画のテーマは……夏の参院選でネット投票の導入はある?

ゲストに社会学者の西田亮介氏をお招きし、在外投票におけるネット投票の可能性について語っていただきました。選挙ドットコムでは、法案の筆頭提出者である立憲民主党の中谷氏にも独自取材を実施!

インターネット投票の現在地と見込みとは?

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「在外投票」ネット投票導入を求め国に署名提出

海外で暮らす日本人が国政選挙で投票する「在外投票」。

そのインターネット投票を求める約2万6000人分の署名が1月31日に林外務大臣に提出されました。

ほぼ時を同じくして、立憲民主党の中谷氏は1月28日の衆院予算委員会で、インターネット投票の早期実現を政府に求めています。

投票するために必要な在外選挙人名簿に登録している人数が、在外邦人の数に対して少ないことについても登録申請の改善を訴えています。

ここで乙武氏は「在外邦人の投票傾向ってどうなんだろう?」とコメント。

これに対して、西田氏は「在外邦人はこれまで選挙のトレンドに影響を与えない存在として例外扱いされてきた」と解説します。

総務省でも、例外扱いゆえにネット投票を認める提案がなされているとのこと。

独自取材!ネット投票はいつ導入される?

選挙ドットコムでは、「インターネット投票の導入の推進に関する法案」の筆頭提出者である立憲民主党の中谷氏にネット投票導入の見込みについて聞きました。

Q1.今国会で成立する見込みは?

今国会での成立の見込みについて、中谷氏は「我が党では議論を終えている。政府与党には速やかに在外邦人向けのネット投票を進めて頂きたい」と回答。

これに対して西田氏はネット投票そのものについては賛同しつつも、中谷氏の回答に対しては「本当に十分に検討したのか」と疑問を呈します。

ネット投票は投票コストの低減といったメリットがある一方で、システム構築は大変難しく、世界を見ても導入している国は多くありません。

西田氏は岐阜県可児市議会議員選挙で、電子投票システムの不調により選挙無効になった例を挙げ、国政選挙が無効になるようなことがあってはならないとコメントしました。

Q2.夏の参院選にも間に合う?

夏の参院選でのネット投票導入について中谷氏は「間に合わない」と明言。

その理由に、現在想定されているシステムがマイナンバーを前提としていること挙げ、「在外選挙人名簿の登録に関しては既知の技術で可能。今夏からでも改善されるように提言を続けていきたい」と回答しました。

これに対しても西田氏は「費用対効果といった問題を全然考えていない」とばっさり切り捨てます。

「現状、各地域の選挙管理委員会が選挙を運用している中で、新規のシステムをどこの負担で導入するのか、効果測定、維持管理といったコストを誰が負担するかまったく議論されていない」と批判しました。

Q3.導入となった場合のデメリットは?

ネット投票導入のデメリットについて、中谷氏は「基本的にデメリットは発生しにくい設計を私たちの案では提言している」と回答。

西田氏「あまり説明された気がしないな」

中谷氏の回答に対して、西田氏は終始懐疑的。

ネット投票のリスクやコストについて、議論が足りていないと感じているようです。

ネット投票は、今後も議論が必要なテーマといえるでしょう。

動画本編はこちら!

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動画内で紹介した中谷氏への質問と回答

Q1)今国会で成立する見込みは?

昨年、立憲民主党・国民民主党で「インターネット投票の導入の推進に関する法律案」を衆議院に提出させて頂きました。この法案では、2025年(令和七年)にその期日を公示される参議院議員の通常選挙からの導入を提言しています。また本法案においては、在外投票等におけるインターネット投票による投票の早期実施に関する検討を盛り込んでおり、2025年より早くインターネット投票により行うことができるように、速やかに必要な法制上・その他の措置を講ずることとしています。

野党から法案を提出して、与党内でも議論が始まっていると仄聞しますが、我が党としてはすでに議論を終えておりますので、政府与党には速やかに在外邦人向けのネット投票を進めて頂きたいと考えております。

Q2)夏の参院選にも間に合うのでしょうか?

今夏は間に合わないと思います。

総務省が想定している在外インターネット投票システムはそもそもマイナンバーカードの利用を前提にシステム構築されています。その上で、海外在住者がマイナンバーカードを利用できるのが、2024年を目処としていますので、現下においては想定されているシステムでは利用できません。

ちなみに私たちの提案では、マイナンバーカードに固執せず、インターネットバンキングなどのように、「個人が所持するもの」と 「個人だけが知りうる又は持ちうる情報」の掛け合わせによる認証を行う方法を提案しており、「セキュリティ」と「利便性」のバランスを踏まえた社会実装が好ましいと感がています。また本来的には、在外選挙人名簿の登録に関しては、オンラインでの対応が既知の技術で可能でありますので、今夏からでも改善されるように提言を続けていきたいと考えています。

Q3)導入となった場合のデメリットはありますか?

超えていかなければならない、技術的・制度的な課題はありますが、紙の投票にプラスアルファのサービスとして提供されますので、基本的にデメリットは発生しにくい設計を私たちの案では提言しています。

【参考 よくある質問】
Q,なりすまし投票や投票干渉は大丈夫?

A,制度と罰則の両面で利便性の確保と自由意志に基づく投票を阻害しないことを想定。そもそも、なりすまし投票の防止については、現在も詐偽投票は公職選挙法違反として2年以下の禁錮または30万円以下の罰金が科せられる。詐偽投票を依頼するなど違反行為を強要、ほう助した人も厳罰が下るほか、投票干渉も1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金。立法事実が 積み重なるようなら、さらに罰則を強化することも検討できる。そして、映画の冒頭に放映される「NO MORE 映画泥棒」のCMのように、それが明確な犯罪であるということを投票前の 画面で啓発し、抑止することも一案として考えられる。また、強要された場合、なりすまし投票及び投票干渉を一時的には防ぐことができないが、本人がその投票に不満を持っている時には、後から投票を上書きできる仕様を想定している。更に今回提出したインターネット投票の導入の推進に関する法律案は、投票日前日までの期日 前投票のインターネット投票を可能とするものであることから、仮に投票日前日の23:59になりすまし投票及び投票干渉が行われたとしても本人がその投票を書き換えたいと考えた時には、投票日当日に紙での投票を行えばその投票が優先される制度設計としている。

Q,システムダウンやサイバーセキュリティは大丈夫?

A,技術は日進月歩であり、あらゆる仕組みにおいて100%のセキュリティはどのシステムでもできないが、すでに実装している国があり、不具合は生じていない。

私たちが提出した法案は、期日前投票をインターネット投票で対応できることにしたものであり、現行の紙での投票システムはそのまま残ることとなる。即ち、インターネット投票システムに不具合が出た時には、現行の紙での投票システムをそのまま利用して頂ける制度設計となっている。その上で、不正投票やサイバー攻撃などを想定したセキュリティー対策、投開票システムの安定的な稼働は乗り越えなければならない課題であることから、しっかりとコストをかけて対策し、常にチェックを繰り返していく必要がある。また、データに関しては、分散管理によるバックアップや、不正ログの検証を行うことにより、適正に管理する体制を整えることを想定している。こうした観点は、民主主義の根幹を担う選挙において、一番大切な視点として、インターネット投票の導入の推進に関する法律案では、選挙等の公正およびこれに対する信頼の確保に関し厳しい条件を掲げた。

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