逗子の自治会と中高生、地域防災冊子をコラボ製作 モグラとリスが案内役として登場 #知り続ける

自治会と連携し、防災ハンドブック作りに取り組んだ生徒ら=逗子市久木の聖和学院中学・高校

 神奈川県逗子市の逗子ハイランド自治会と地元の聖和学院中学・高校(同市久木)が協力し、若者向けの防災ハンドブックを完成させた。高齢化が進む中、地域防災に対する若い世代の関心を高めたい自治会と、防災教育の実践の場を探っていた同校の思いが一致。生徒が考案したキャラクターが地元の災害リスクを解説するなど、手に取ってもらうための工夫をちりばめた。冒頭に載せた「これからの防災減災を担っていくのは私たち若者」とのメッセージに生徒の思いが込められており、自治会は3月に全約1300世帯に配布する予定だ。

 「津波の心配はないよ やはり地震が怖いね」「逗子ハイランドの一部に警戒地域があるよ!」

 2月に完成した「家族でつくる じぶん防災帳」(A4判20ページ)には、モグラとリスのキャラクターが案内役として登場する。高台に住宅地が広がるハイランドの断面図を載せて標高の高さや地形の高低を説明しつつ、崖崩れや強風といった地元のリスクを平易な言葉で伝えている。

 市の指定避難所である地元の小中学校、高齢者らを受け入れる福祉避難所のほか、大地震の緊急避難場所となる自治会館などを表記。その一方で、「小学校や自治会館に行くことだけが避難ではないよ」と図やイラストを交えて避難行動の要点を指南した。

 21日にオンラインで完成報告会を開いた生徒たちは「防災は難しいと思いがちだが、読みやすくするために色や字体も工夫した」「人ごとではなく『自分ごと』として捉えてもらえるよう、自宅の備蓄品などを書き込めるページも作り、家族と話し合って完成させるようにした」と工夫の一端を明かした。防災知識を問うクイズも載せ、ハンドブックを読み返せば答えが分かるようにしている。

 こうした自治会と学校のコラボレーションが実現したのは、聖和学院が2020年度にスタートさせた「地域の防災・減災プロジェクト」がきっかけだ。当初は新型コロナウイルス禍でオンラインの交流や学習が中心だったが、その過程で知り合ったハイランド自治会の橋本和信防災部長(69)が生徒の意欲に感心し、一緒に取り組もうと提案した。

 21年5月から具体的な検討に着手し、生徒たちはハイランドに出向いて地形的な特徴を理解。自治会館や近隣の公園の状況も確かめ、市の担当者の助言を得ながら、避難場所の運営マニュアルも作成した。発熱者やペットの専用スペースを確保するといった視点を反映させている。

 大学生の時に東日本大震災の被災地でボランティア活動に携わった経験から、プロジェクトを発案した栢本さゆり教諭は「私たちの発信が地域の安全や命につながるという責任感を感じながらの活動だった。生徒は壁にぶつかりながら、学びを積み重ねることができた」と成果を強調。メンバーの中高生15人のリーダーを務めた高校2年大垣結香さん(17)は「取り組みを通じて地域と連携することの大切さを実感した。この成果を同じ世代の人たちに伝えていきたい」と今後を見据える。

 自治会によると、ハイランドは入居開始から約半世紀が経過。住民の高齢化が進む中でも、若い世代が転入しているという。橋本さんは「いざという時は若者の力を頼らざるを得ない。若い感性を詰め込んだハンドブックを今後の防災活動に生かしていきたい」と喜んでいる。

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