ロシア軍によるウクライナ侵攻を契機に、国内の一部政治家が米国の核兵器を自国に配備して共同運用する「核共有」を主張していることに対し、抗議の声を上げる大学生が横浜にいる。広島県出身で、これまで被爆者や政治家らに向き合ってきたからこそ、すぐさま察知した危険性。今こそ、リスクの根源である核兵器の廃絶に進むべきだと訴える。
「まさか」─。「核政策を知りたい広島若者有権者の会(カクワカ広島)」共同代表で慶応大学法学部3年の高橋悠太さん(21)=横浜市港北区=は2月24日、電車内で動揺していた。講師として核兵器禁止条約の意義を訴えた講演会の帰り。ツイッターで知ったのは核保有国のロシアが戦端を開いたという事実だった。
数日後、ロシアは核部隊の警戒態勢を引き上げ、核使用をちらつかせた威嚇が現実となった。国内では安倍晋三元首相がテレビ番組で核共有の議論を呼び掛け、同調する声も含め政界に波紋が広がった。
危機感を抱いた高橋さんは今月1日、カクワカ広島として「日本への核配備を容認する国民世論の形成につながりかねない」と抗議声明を発表。「世界の安全がどのように守られているのか。現実の議論をタブー視してはならない」などと核共有を肯定する安倍発言について、高橋さんは「非核三原則などこれまで積み重ねてきた議論の蓄積を無視し、人々の危機感や恐怖を利用して性急に進めようとしている」と批判する。