日本最古のジャズ喫茶 横浜・野毛の「ちぐさ」が博物館に 創業90周年の23年にリニューアル

ミュージアム建て替えへの準備を進める藤澤さん(左)ら=横浜市中区

 現存する日本最古のジャズ喫茶である横浜・野毛の「ちぐさ」(横浜市中区)が、創業90周年を迎える2023年にジャズミュージアムとして生まれ変わる。建物の老朽化に伴い建て替えるもので、施設内には、終戦直後から創業店主の吉田衛(まもる)さん(故人)が営んだ店舗を再現し、自由にライブができる空間も設ける。店舗を運営する一般社団法人「ジャズ喫茶ちぐさ・吉田衛記念館」はファンドを発足、11日から建て替えに向け市民の寄付を募る。

 ちぐさが野毛1丁目に開店したのは1933年。大学生らから人気を集めたが、戦争が始まるとジャズは敵性音楽として禁止され、吉田さんも出征した。46年に帰還したが、店は6千枚以上のレコードとともに焼失していた。

 だが、常連客やミュージシャンらが隠し持っていたレコード計千数百枚が持ち寄られた。また、吉田さんは米軍が戦線の兵士慰問用に制作したレコード「Vディスク」を収集し、48年に店を再開。秋吉敏子さんや渡辺貞夫さん、日野皓正さんら世界的プレーヤーも通い詰めた。

 吉田さんが94年、81歳で亡くなると妹の孝子さんや常連客らが営業を続けたが、地域の開発計画で2007年に閉店した。所蔵数で日本最多とされる54枚のVディスクや、一流ジャズプレーヤーの書簡、写真、店の備品などは「野毛地区街づくり会」が受け継いだ。そしてちぐさを愛する人たちが社団法人を設立し、12年に野毛2丁目で店を再開した。

 再開後10周年を迎えたが、建物は築70年を超え、市の調査で大地震に耐えられないと分かった。それを契機に、ミュージアムとしての再生を決めた。

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