<南風>“美ら星”の里

 日本で最も星空が美しい場所はどこかご存知ですか。「天文学者が選ぶ綺麗な星空」ランキングで1位に選ばれたのは何と、沖縄の石垣島天文台です。大気が安定しており、星がくっきりと見えるのです。北緯24度の南の島ですので、日本本土では観測できないカノープスや南十字星も眺めることができます。 石垣島天文台には口径1メートルの反射望遠鏡があります。愛称は「むりかぶし(群星)」。八重山地方の言葉で「すばる(プレアデス星団)」を意味します。ハワイ島のすばる望遠鏡は口径8・2メートルですので、さしずめその弟・妹でしょうか。

 石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡を私が初めて訪ねたのは、一昨年の4月。宮地竹史所長と研究員の花山秀和さんのおかげで、講演会を開くことができました。多くの方のさまざまな質問に、「美ら星」石垣島での天文人気の高さを実感。講演会後は、天文歓談で盛り上がりました。

 その時に聞いて感激したのが、天文台設立の経緯です。島にぜひ望遠鏡をという市民の熱意が高く、高校生が中心となって署名活動が行われ、設立に至ったそうです。運営は石垣市など自治体に加え、八重山星の会など市民の方々が積極的に参加しています。まさしく地域に根差した天文台です。一般向けの天体観望会も開催しています。

 毎年8月には「南の島の星まつり」も開催されています。全島一斉ライトダウンで、1時間街明かりが消され、市内の上空に天の川が出現します。ライブには夏川りみさんも出演。歌人の俵万智さんが選者を務める「美ら星の歌」短歌コンテストも行われています。昨年の入選作の中で私のお気に入りはこちら。「八重山へ天体本をいざ持参 星見えすぎて星座結べず」

 星が見えすぎる島、石垣島へ皆さんも出かけてみませんか。

(嘉数悠子、国立天文台ハワイ観測所アウトリーチ・スペシャリスト)

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