文豪・山本周五郎しのぶ記念碑 ゆかりの横浜・本牧に建立、除幕式 ファン有志らが設置 地元の風土描いた随筆も 

除幕された山本周五郎の記念碑。右から大久保さん、松野さん=横浜市中区本牧三之谷

 横浜・本牧の地に居を構え、数々の名作を生んだ文豪、山本周五郎をしのぶ記念碑が14日、横浜市中区本牧三之谷に建立され、除幕式が開かれた。地域住民ら約40人が参加し、周五郎の親族は「これを機に周五郎の本を手に取って」と呼び掛けた。

 周五郎は文士が集まった東京・馬込町に住んでいたが、戦災で転居を余儀なくされた。出版社の経営者で著名な装丁家でもあった秋朱之介(あきしゅのすけ)を頼り、1946年に本牧に移り住んだ。

 当初は秋邸の離れで執筆していたが、やがて自宅から徒歩20分ほどの旅館「間門園」を仕事場とするようになった。同旅館で倒れて死去するまでの21年間、本牧で「柳橋物語」「樅(もみ)ノ木は残った」「ながい坂」などの名作を生んだ。また、随筆などには地元の人たちのことや、本牧の風土なども描いた。

 記念碑は、地元の本牧・根岸地区連合町内会や周五郎作品を愛する有志が設置した。木の枠に周五郎の略歴が書かれたプレートがはめ込まれ、ゆかりの散歩道も記されている。

 除幕式に参加した秋の長女、大久保文香さん(81)は「山本家の子どもと騒いでいたら、おじちゃん(周五郎)に怒られた」と思い出を語った。また、周五郎の孫の妻、松野由紀子さん(57)は「若い人はほとんどが周五郎を知らないだろう。ぜひ知ってほしい」と話していた。

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