脱サラから人脈ゼロで起業し、オリジナル商品をイチから開発!ドッグフードだいち 小林宏幸さん【前編】

起業に関心のある方の「まだ起業していない理由」第2位は『ビジネスのアイデアが思いつかない』。
(2021年3月 日本政策金融公庫 「2020年度起業と起業意識に関する調査」より)

では、すでに起業している方は、どうやってビジネスのアイデアを思いついたのでしょうか?

本日お話をお伺いした、ドッグフード「だいち」の開発・販売を行っている株式会社克フーズの小林宏幸さんは、ふとしたきっかけで、それまでいた業界とはまったく異なる分野でのビジネスアイデアを思いついたそうです。

親身でちょっぴり辛口なアドバイスが人気の「犬の管理栄養士 YouTuber」としての顔もお持ちの小林さんに、人脈ゼロから自社製品を開発・販売に至るまでの起業エピソードについて、ロカプレ編集長の原がお話をお伺いしてきました。

(取材日:2021年9月・インタビュー/文:ロカプレ編集長 原くみこ)

ロカロウ人脈ゼロでも自社製品を開発してビジネスにすることってできるの!?
これは気になるね。後編はこちら
脱サラから人脈ゼロで起業し、オリジナル商品をイチから開発!ドッグフードだいち 小林宏幸さん【後編】

株式会社克フーズ 代表 小林宏幸(こばやしひろゆき)

1989年生まれ、札幌市出身。小樽商科大学卒業後、札幌市の食品会社に入社。最終的には営業部課長として営業、製造・品質管理、経理などの業務に従事。2017年1月創業。オリジナルドッグフードの開発に一年を費やし、2018年1月から本格的に”北海道産ドッグフードだいち”販売開始。 YouTubeや札幌でドッグフードセミナー等も主宰。第1回「札幌 地域クラウド交流会 ®」優勝。ドッグフード口コミサイト「わんちゃんとドッグフード」監修。趣味はバドミントン、カフェ巡り。

勤めていた会社が倒産、「経営」に興味を持ち起業の道へ。

原:小林さん、本日はよろしくお願いいたします。小林さんは食品関連企業でのサラリーマンの経験を経て、北海道の厳選素材を100%使用した安心安全なオリジナルの無添加ドッグフードを、直営のオンラインショップで販売しているそうですね。起業を志したきっかけを教えていただけますか。

小林:大学を出て最初に勤めたのが小さな食品会社で、営業から工場の仕事、経理や財務など経営面に幅広く携わるような環境でした。倒産寸前で経営コンサルタントが支援に入り、その方に簿記を教えてもらいながら会社の立て直しをする中で、会社のお金の流れやその仕組みに関心を持ったのがきっかけです。

原:会社員の立場で経営に携わる中で、起業に興味をもったのですね。

小林:そうです、だから起業前に何かこのビジネスをやりたい、といったことはなかったんですよね。

原:ではビジネスアイデアを考える中で、犬を飼ったことがない小林さんがなぜドッグフードを事業領域として選んだのか、そのきっかけや理由が気になります!

小林:友人の家に遊びに行った時、飼っている犬がドッグフードを食べなくなったと言っていて、たまたまドッグフードの成分表示を見たのがきっかけでした。そのドッグフードには決して安全とは言えない添加物や、人間の食品には使われることがない原材料の数々が使われていることを知り、衝撃を受けました。

原:食品会社にいらっしゃったので、成分表示の意味もわかったのですね。詳しく知らない素人から見ると「獣医師が推薦」などと書かれていると、良いものなのかなと思ってしまいます。

小林:そう思いますよね、でも実際は、獣医やペットに詳しい人が必ずしも良いペットフードを作れるわけではありません。

ロカロウ確かに、勉強のできる人と教えるのが上手い人は違う、みたいな感じ?

小林:それから気になって他のドッグフードも見てみると、値段に関係なく安全性に疑問がある原材料が含まれた商品ばかり。そこで食品の知識をしっかり持った自分が、動物にとって本当に良いペットフードを作ろうと決めました。

原:小林さんの知識と経験がドッグフードと結びつき、事業アイデアにつながったのですね。思い立ってから実際に起業するまでは、どのくらいの期間準備しましたか?

小林:それが準備も何も、起業する前に勤めていた会社が倒産してしまったんですよ!それで会社都合退職になったので、まぁいい機会かなと転職をせずにそのまま起業することを決めました。

原:ある意味良いタイミングだったのかもしれませんね。起業直後はどのようなことをされていましたか。

小林:起業したといってもゼロからのスタートだったので、まず研究開発に取り組み、最初の商品の販売を開始するまで丸1年間かかりました。

ロカロウ1年間売り上げゼロとは大変!起業準備として当面の生活資金を貯金しておくのも大事だね。

小林:食品の知識はあってもペットフードの知識はなかったので、専門家の方から学んだり、原料調達のために生産者さんに会いにいったり、プロトタイプを作るなどして、商品開発と販売の準備を進めました。

原:そういった人脈が元々あったのですか?

小林:いえ、特になかったので全部インターネットで探して、連絡をとって会いに行って、ということをしていましたね。大手ドッグフードメーカーの元社員の方や、獣医師さん、栄養学の先生、原材料の生産者の方…全部ネット経由で知り合いました。

原:起業を考えている人が「自分には何の人脈もないから」と及び腰になることも多いですが、そのお話を聞くと人脈なんてなくても大丈夫、って気がしてきますね。

小林:全然大丈夫ですよ。ネット便利ですよ(笑)

原:ただネットで情報を知るだけではなく、直接連絡を取る、会いに行くといった行動力は必要ですね。

小林:それはそうですね。連絡したら意外とみんな会ってくれるので、どんどん動くのがいいと思います。

良い物を作っただけでは売れない?やってみて初めて気づいたPRの重要性。

原:起業前後で、実際にやってみたら全然違ったというエピソードは何かありましたか。

小林:あります、何と言ってもまず「売れない」(笑)

原:ははは、売れると思っていたのに売れませんでした?

小林:商品を販売する前は、こんなに良い商品なんだから世の中に出せばすぐ売れる、と思っていました。でも販売を開始しただけではまったく売れませんでしたね。当たり前ですよね、誰も知らないんですから!

原:ものづくりで起業される方は当時の小林さんと同じように「良い物を作れば売れる」と思っている方も少なくありません。そこからプロモーションやPRの重要性に気づいたのですね。

小林:そうですね、まずはお客さんが商品を買うまでの流れについて考えました。宣伝していきなり売れるいうことはなくて、知られなければ何も始まらない。知る・欲しいと思う・購入を検討する、その流れだと。だからまずはとにかく、知ってもらうためにどうしたらいいかを考えましたね。

原:そこで小林さんが商品PRのために活用されているのがYouTube、と。

小林:はい、ただドッグフードという商品はたくさんありますから、商品の良さだけを伝えても違いはわかりにくく、埋もれてしまう。それは最初からわかっていたので、競合があまりやっていないことは何かと考え、売っている自分自身を全面に押し出して、人に興味を持ってもらう作戦にしました。だからYouTubeも自分がメインで出ています。

原:その作戦が功を奏して、想像通りに売れるようになりましたか?

小林:そこからちょっと風向きが変わって、売れるようになりましたね。

「できないこと」を明確にすると、やるべきことが見えてくる。

原:他にイメージしていた会社像と現実のギャップってありますか。

小林:そうですね、それまで普通に会社員だったので、いわゆる「会社」っていう…事務所に社員がいて、ドッグフードを作る自社工場があってというイメージを持っていましたが、社員も工場もなくてもできているので、起業前のイメージとはかなり違いますね。

原:たしかに昔ながらの「製造業の会社」ってそういうイメージがあるかもしれません。いまは従業員はゼロですか?

小林:ひとりです。

原:ではおひとりで事業を運営される工夫などありましたら教えてください。

小林:資金的に従業員を雇うのは難しかったので、じゃあ自分ひとりでやるには、というところからビジネスプランを練りました。例えば実店舗を出して販売をするなら営業時間内は店に立つことになる、するとその間は他のことができなくなるからそれは無理だ、じゃあ販売はネットでやろう、といった流れです。

原:「できないこと」を明確にすることで、目標を実現するための具体的な方法が見えたんですね。

小林:今は電話代行など、任せようと思えばほとんどのことは外の人にお願いできることもわかりました。起業前は自分の会社員時代の会社をイメージしていたので、社員かアルバイトですべてを回してって考えていましたが、むしろ必要に合わせて、外部のプロの力を借りたほうがうまくいきますよね。

原:ビジネスの規模が小さいうちは、主事業に関わること以外は業務量に増減もあると思いますので、必要なときに必要な方にお願いできる体制を整えることができると心強いですね。

ロカロウフリーランサーなどに業務委託をしながら事業を拡大していくのも手だね!

小林:もうひとつ、これを言ったらみんなに怒られるのですが、顧客管理が自分には向いていなかったので…リピーターさん向けのダイレクトマーケティングを一切していません。

原:ECサイトでリピート商材にも関わらず?!メルマガとかもですか?

小林:メルマガもしていません!でも以前やっていたことはあります。「やるのが当然、やらなければならない」と思ってやっていましたが、時間もかかるし辛かったんですよね。試しにやめてみたら自分の心が楽になったので、そのまま思い切ってやめました。

原:小林さんとしては、やめてよかった、ということですよね。

小林:はい、ただやめてラクしたいというよりは、浮いた時間で自分がより得意な他のことに時間を使っています。例えばメルマガ1本作成して送る時間でYouTube3本撮るとか。

原:自分の人生にとって何が幸せか、そのために何を優先するか、バランスですよね。年商が増えることが幸せとも限りません。自分がどんな働き方をするか、それを選択できるのも起業家ならではの面白さかもしれませんね。

原:ちなみにおひとりで経営とのことですが、起業当初から個人事業主ではなく「株式会社」として始められたのはなぜですか?

小林:それは完全に勢いです、ただ調子に乗って、始めるなら株式会社だと(笑)

原:たしかに、株式会社=THE会社、って感じはします(笑)小林さん的には、最初から株式会社で起業するのはおすすめですか?

小林:うーん、悪いことはないですが、最初からする必要もないかなと思います。

原:株式会社で良かった、という機会は、まだそれほどありませんか?

小林:そう言われると、仕入れ先から「法人のほうが取引がしやすい」と言われたことがあったので、良かったのかもしれません。あとは最近YouTubeで僕のことを知った人と後からリアルで会ったときに”株式会社克フーズ”の名刺を出すと、「会社としてやっていたんだ?」と驚かれたり、「偉いね」と言われたりします。実際は登記にかかる費用を20万円くらい払って書類を出すだけなので、別に偉いことは何もないんですが…

原:それが社会的信用、ってものかもしれませんね。

小林:あ、名刺などを作った時に“代表取締役”がついている自分の名前を見ると、やる気が出ますよ(笑)

ロカロウうんうん、そういうのも大事だよね!

後編では、ひとり経営者が挫折しそうになった時の行動のヒントを。

自分が苦手なこと・やりたくないことに正直に向き合って、自分らしい経営スタイルを模索している小林さんのお話、とても参考になりました。

後編では、ひとり経営者が気を付けるべきメンタルヘルスとの付き合い方などを中心に、挫折しそうになったときの行動のヒントなどをお伺いしましたので、ぜひ後編もご覧ください!

後編はこちら
脱サラから人脈ゼロでオリジナル商品の開発・販売へ!ドッグフードだいち 小林宏幸さん【後編】## 取材協力

北海道産ドッグフードだいち 株式会社克フーズ 代表 小林宏幸さん

住所:北海道札幌市白石区東札幌1条4丁目8番11号
電話番号:011-822-8577
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YouTubeチャンネル「犬の管理栄養士 小林宏幸」

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