【診療所医師に聞く】リフィル処方箋の実際/「リフィル処方箋やオンライン診療では、利便性だけでなく必要な時に受診する患者のヘルスリテラシー育成が問われる」

【2022.04.18配信】リフィル処方箋への対応について、医療法人社団DEN みいクリニック(東京都、大阪府)理事長の宮田俊男医師は、「リフィル処方箋やオンライン診療では、利便性だけを重視することなく必要な時に受診する患者のヘルスリテラシー育成が問われる」との考えを示した。

■宮田俊男(みやた・としお) 医療法人社団DEN みいクリニック(東京都、大阪府)理事長
1975年生まれ。東京都出身。早稲田大学理工学部、大阪大学医学部卒業。内閣官房健康・医療戦略室 戦略推進補佐官などを歴任。早稲田大学理工学術院教授、厚生労働省参与

「お薬が毎回変わっていないような患者」から希望があれば出す/「糖尿病患者は微妙、管理できるかが観点」

――リフィル処方箋が4月1日から切れるようにはなりましが、先生はどのように対応しますか。
宮田 基本的にはお薬が毎回変わってないような患者さんなど、希望の患者さんがいれば対応したいと思っております。
――患者さん側のニーズ喚起を国も狙っているようにも思いますが、先生も出発点としては患者さん側が言ってくることを想定していますか。
宮田 そうですね。こちら側からリフィル処方箋とは言わないと思います。
――そのあたりは言ったら処方が減ってしまうという危惧もあるのですか。
宮田 こちら側からはする必要はないと思っているということです。ただ注意点として、できれば同じ薬局薬剤師の対応ということで、そのあたりは医師会のガイドラインがまとめられると思っております。
――薬局にお願いしたいことはありますか。
宮田 もちろん細かな症状変化があれば、ちゃんと医療機関への受診は勧めてほしいです。
――先生は例えば慢性疾患の患者にはどれぐらいの日にちで処方を切ることが多いですか。
宮田 2カ月が多いですかね。
――ということはリフィルになると2カ月×2回で4カ月分を出す可能性があるということでしょうか。
宮田 全然、4カ月もあり得ると思います。
――医師会としては長期処方そのものを望ましくないとしていると思うのですが。
宮田 一律に安易な長期処方は望ましくないと思いますが、許容できる個別のケースについては医師会の中でも人によると思います。
――例えば2カ月分出している糖尿病の患者さんから、「4カ月間でリフィルでお願いします」と言われたらどうですか。
宮田 糖尿病は微妙ですね。高血圧とか高脂血症の患者さんには向いていると思います。高血圧は自分で血圧管理ができ、血圧が高くなった場合に申告できる方は問題ないと思いますし、高脂血症も糖尿病と比べれば変動があってもある程度許容できますので。糖尿病は何かあるとすぐ悪化するのでやっぱり医師からの管理、エンパワーメントも必要だと思います。
――血圧は患者さんとしても自分の管理で可視化しやすいという意味で分かりやすいが、
糖尿病はわざわざ血糖値を計らないと分からないので自覚症状もないままに進行してしまう心配があるということでしょうか。
宮田 そうですね。今後の課題として検体測定室でもヘモグロビンA1cなどが測れるでしょうから、そうしたものをどう使ってどう連携するのかは、今後課題があると思います。
――コロナ禍でのニーズという面では、接触機会を減らしたい人が1回でもらいたいという気持ちがあるということでしょうか。
宮田 それはやっぱり待合が密になったりしますので、特にコロナが多い時期には不要不急の受診を減らすという観点は必要だと思います。
――今ですと診察に行ってまた薬局さんにも行くから患者さんとしては2回接触機会がありますが、薬局に行くにしてもすでに診断済で受診機会が減るので、その分、待合室が混雑することの回避にもなるし、要は感染が拡大しているときはリフィルを使うニーズも高まるという理解でよろしいでしょうか。
宮田 そうだと思います。薬局はたくさんありますから。クリニックは混みますからね。
――そのあたりの接触機会低減という意味では、オンライン診療の状況はいかがですか。
宮田 オンライン診療を“できる”医療機関は多くても、実際によく行う医師はまだまだ少ないですね。特にオンライン診療の初診は医師にとっても手間がかかりますので。
――リフィルについては関係者は一気に広がるとはあまり思っていないようです。まずはリフィルという言葉を入れたことと、リフィル処方箋が出てきたときに、逆に1個でも2個でもいいからちゃんとした対応をしましたという好事例を積み重ねていく段階ではないかと。例えば体調変化に気づいて受診勧奨をしたとかそういう実績作りをしてほしいという思いが強いみたいです。どんどんリフィル処方箋をきってもらえるようにするのではなく、徐々に徐々にという感じです。そういう意味で言うと、先生が実際にリフィル処方箋を出す率はどの程度が想定されるでしょうか。例えば100人いたら1人2人なのか、そのあたりはいかがでしょうか。
宮田 それはなんとも言えないですね。1人2人ということはないと思います。
――患者さんがどう言ってくるかによるということでしょうか。
宮田 やはり働いている方、子育て中の方、学生さんなど忙しい方々にはニーズがあると思います。一方で、医師に相談したいことが多くあるような高齢者にはあまり広がらないと思います。
――先生自身も4月になってみて患者さんからリフィルという言葉がどれぐらい出てくるかはちょっと見えないということでしょうか。
宮田 そうですね。テレビの取材もちょいちょいありますので。
――やはりテレビの影響は大きそうですよね。4月になってからテレビでバーンと取り扱いをされてしまうと一気に便利なもの、私もやってみたいみたいとなりますよね。メディアの報道や注目度が4月にどれぐらいあるかも関わるというところですかね。先生は今回、リフィル処方箋導入が決まる前から、コロナ禍が始まった時にリフィルがあってもいいのではないかというご意見でした。そのようなドクター側から別にいいんじゃないかという声を発信したときに、医師会の皆様から先生に連絡が来たりとか、そういうのはあるんですか。
宮田 医師会の会員でも理由があり、適切に運用される場合は妨げないという意見の方もいますよ。
――特に直接的な反応は今まで感じたことはないですか。
宮田 基本的にうちはオンライン診療もそうですが、症例ごとに適切に運用する分には構わないという反応です。医師会にも入っていますし、会活動にもできるだけ参加しています。ビジネス的なクリニックがリフィル処方箋をどんどんきりますという感じで、地域で丁寧に診ている患者さんが利便性で安易にリフィルを選択するということは警戒した方がいいと思います。
――今はネットもありますしスマホもありますので、いろんなツールから地域とは違う流れが出てきてしまいますが、防ぎようはあるんでしょうか。
宮田 防ぐのはなかなか難しいと思います。だからこそ薬剤師さんとか患者さんのセルフケア力が大事になってくると思います。
――いわゆるヘルスリテラシーですね。そもそもリフィル処方箋を何でこんなにやろうとしているのかというと、やはり医療費削減ですよね。
宮田 国は医療費の削減という言葉は使いませんが、医療費の適正化は重要と考えています。
そこではやはり、セルフケア力が重要だと思うのですね。厚労省も「上手な医療のかかり方」を啓発していますが、ちゃんと適切な時に受診をすることをいかに担保するかということですね。安定していれば別に受診する必要はないので。

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