〈じょうえつレポート〉さらに巧妙、悪質に 特殊詐欺被害多発 上越署生活安全課・山本課長に聞く 「防げない犯罪ではない」 電話・メールで金の話は詐欺 冷静な対応を

 特殊詐欺被害が上越市内で増加している。すでに昨年同期を上回り、被害者は高齢者だけでなく10代もおり、手口の巧妙化や相手を選ばない悪質さなどが背景にある。被害の現状と被害に遭わないための心構えについて、上越警察署生活安全課の山本克志課長に聞いた。(報道部・笠原基記者)

8件300万円超 世代問わず

 上越署管内では20日時点、特殊詐欺被害が8件、被害額が約302万5000円。昨年同期の1件、約250万円を上回っている。被害者は10、20代が各1人、50代と65歳以上が各3人と、被害に遭う年齢層が広がっている。昨年は年間11件、約3623万円、一昨年は年間3件、約288万円の被害。

 手口別では架空請求詐欺が6件、融資保証金詐欺と還付金詐欺が各1件。このうち最も多い架空請求詐欺は、携帯電話やインターネット利用料の未払い金請求が3件、パソコンがウイルスに感染したと警告するサポート料請求が2件、訪問販売防止のための手続き名目の料金請求が1件と、その内容は多岐にわたる。

架空請求の手口は多様化

 山本課長によると、近年は架空請求が特に多く、昨年1年間に同署管内で発生した特殊詐欺11件のうち、10件が該当するという。「基本的な詐欺の内容は変わっていないが、国や行政、大手メーカーを名乗るなど、手口が多様化している。電話口で複数人が対応したり、身分証を画像で提示したりして、被害者を信じ込ませる例もある」と警戒する。

 支払い方法は電子マネーが3件、ATMでの口座振り込みが2件、受け取りに来たものが1件。電子マネー購入と振り込みは「一度に大金が動くと怪しまれる」「一度に高額は買えないから」などと説明し、複数のコンビニ、金融機関を回らせる手口が多く、水際での防止が難しくなっている。

返信せず防犯機能の活用も

 増加傾向の特殊詐欺被害について、山本課長は「防げない犯罪ではない」と力を込める。同署管内では20日時点で、コンビニや郵便局など振り込みや支払い事案は4件、約840万円分の被害を防いだという。また、怪しいメールや電話が来たという相談は毎日寄せられており、「相手を選ばず、被害や未然防止の何十倍、何百倍ものメールや電話が送られている」。

 また個人で被害を防ぐために必要な心構えとして、「相手が誰であれ、電話やメールでお金の話が出たら、まず詐欺を疑ってほしい」と話す。メールは記載された番号に電話しなければ終わり。電話なら防犯機能付き電話の導入を勧める。特殊詐欺被害防止のため通話を録音するもので、事前にアナウンスが流れる。県内ではこうした機能付き電話での被害が著しく低いという。

すぐ支払わずまずは相談

 さらに心配になったときも、すぐ支払わず、家族や友人など身近な人への相談が有効という。警察だけでなく、市や消費者センターなど、多くの機関が相談窓口を設置しているため、連絡することも大切だ。

 県警は動画共有サイト・ユーチューブ上に手口ごとの対応をまとめた動画をアップしている。山本課長は「周囲から被害を防ぐことが難しい犯罪。特殊詐欺には引っ掛からないという意識と、冷静な対応を心掛けてもらうことが一番」と呼び掛ける。

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