イノベーション(技術革新)なしには生き残れない時代-。食肉加工や醸造関連など食品工場向け機械・設備の設計、製造、設置を手掛けるMFE HIMUKA(日向市)が、新型コロナウイルス感染拡大を機に事業転換を図ろうとしている。島原俊英社長に戦略と展望を聞いた。
-コロナ禍の影響は。
「この2年間、感染前2019年9月期と比較して売上高が4割前後減少し、年商8億円まで落ち込んだ。主力である食品業界の設備投資マインドが冷え込み、元請け企業の受注が減ったのが最大の要因。鉄やステンレスといった資材の高騰も響いた」
「受注した機械・設備を設計、製造し据え付けるまでに半年から1年ほどかかる。足の長い商売のため、昨年10月以降ようやく回復の兆しが見えてきた」
-下請けから製品開発型のメーカーへ、地元企業として成長への一歩を踏み出した。
「売上高の大半が元請けからの受注に左右される経営状況から脱却するには、構造転換が必要だと考えた。コロナ前から(提供側の発想で商品開発などを行う)プロダクトアウトでなく、(付加価値を高め買い手が必要とするものを提供する)マーケットインになるべきだと思っていた」
「変化のスピードが速い時代、生き残るにはイノベーションが欠かせなくなっていたのが、コロナ禍で一層加速したのではないか。革新を生み出すエコシステム(生態系)醸成の重要性も感じており、県内の企業や金融機関、自治体とワークショップを開催。新事業の創出を目指している」
-創業50周年を迎えた19年には社名を「日向中島鉄工所」から変更。「食と環境とエネルギー」を事業ドメイン(領域)とした。
「当社が掲げる基本コンセプトは、ものづくりを通して宮崎の課題を解決すること。地域内の経済循環を目的とする新電力会社の創設などSDGs(持続可能な開発目標)にも力を入れている」
-コロナ後の戦略は。
「会社も地域も自立し、自ら課題に取り組んでいかなければならない。第4次産業革命といわれるように、企業の目的を強く意識しビジネスモデルを革新することが不可欠。地域ぐるみで産業人材を育て、活躍できる場をつくっていきたい。持続可能な社会をつくるためにも高い問題意識と危機感を持ち、宮崎でしかできないことを追求していく」
しまはら・としひで 日向学院中・高-熊本大工学部卒業後、宇部興産に入社。1999年に退社後、前身の日向中島鉄工所専務取締役に就任、2001年から現職。12年ひむか野菜光房創業。県中小企業家同友会会長、県教育委員会委員。日向市出身。59歳。