九州で製造した衛星を九州から宇宙へ! QPS研究所のSAR衛星がイプシロン6号機で打ち上げへ

福岡県に拠点を置く民間宇宙企業QPS研究所と株式会社IHIエアロスペースは4月18日に、QPS研究所が開発する人工衛星「QPS-SAR」3号機と4号機を「イプシロン」ロケット6号機で打ち上げる契約を締結しました。

この衛星は、QPS研究所が北部九州を中心とする日本全国のパートナー企業とともに開発・製造を行っているということです。同衛星は2022年度中にイプシロンロケット6号機で、鹿児島県にある内之浦宇宙空間観測所から打ち上げられます。

【▲ 「イプシロン」ロケットのイメージ(Credit: JAXA)】

QPS研究所の衛星は、合成開口レーダー(SAR)と呼ばれる方法で観測を実施します。SARは、時間や天候、昼夜に関わらず、レーダーを用いて観測できる衛星のことです。一般的な光学衛星は、天候などにより観測時間が左右されます。一方で、SARは電磁波を地表に向けて照射し、跳ね返ってきた電磁波を受信することで地表の状態を画像化する技術です。

同研究所は、大型の展開アンテナを持ちながら、10kgまで軽量化したSAR衛星を開発。質量は従来のSAR衛星の20分の1、コストは100分の1となりました。同研究所は2019年12月11日に、1号機「イザナギ」をインドの「PSLV」ロケットで打ち上げました。また2021年1月24日に、2号機「イザナミ」をスペースXの「ファルコン9」ロケットで打ち上げています。同年5月には初の画像取得に成功しました。

QPS研究所によると、今後は、毎年複数の小型SAR衛星を打ち上げることで、2025年以降をめどに、36機の小型衛星からなる衛星コンステレーションを構成する予定で、地球上の任意の場所を平均10分間隔というほぼリアルタリムで観測が可能になるということです。

【▲QPS研究所が開発する「QPS-SAR」衛星(Credit: QPS研究所)】

今回の締結について、QPS研究所の創設者・八坂哲雄氏は、九州に宇宙産業を根付かせたいという同研究所の創業経緯を述べた後、「今回、初のイプシロンロケットでの商業衛星の打ち上げで、創業当初から考えていた、九州で製造した衛星を九州から打ち上げるという20年越しの想いが実現することは誠に感慨深い」とコメントしました。

イプシロンロケット6号機は株式会社IHIエアロスペースによって打ち上げられます。同社にとって商業衛星の打ち上げ契約は、今回が初めてになるということです。また、QPS研究所の衛星と一緒に、JAXAが進める革新的衛星技術実証による「小型実証衛星3号機(RAISE-3)」が搭載されます。この契約に伴い、RAISE-3において同時打ち上げの予定だった超小型衛星3機をIHIエアロスペースが調達する別のロケットで打ち上げることになりました。ロケットの詳細は、発表されておらず、今後明らかにされていくものと考えられます。

【▲革新的衛星技術実証3号機の打ち上げ変更について。2022年4月22日文部科学省宇宙開発利用部会報告より引用(Credit: JAXA)】

Source

  • Image credit: JAXA, QPS研究所
  • QPS研究所 \- 小型SAR衛星QPS-SAR 3、4号機の打ち上げに関して IHIエアロスペース社と契約を締結し、2022年度にイプシロンロケット6号機で打上げ予定です
  • IHI \- IHIグループ初となる衛星打上げを受注 ~九州発のスタートアップ企業QPS研究所の商業観測衛星2基をイプシロンロケット6号機で打上げ~
  • JAXA \- イプシロンロケット6号機による民間小型SAR衛星の受託打上げおよび革新的衛星技術実証3号機打上げスキームの一部変更について

文/出口隼詩

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